内閣府の規制改革推進会議は、18年に初めて行政手続きコストの定量化に成功した。その内容を用いながら行政DXの経済効果を確認していこう。
図表は規制改革推進会議の公表した、分野別の行政手続きコストと削減時間の見通しである。事業者が主要な行政手続きにかけたコストは3億4727万時間と推定され、その額を「給与」「賞与」「福利厚生費」を加味した時間あたり人件費2543円で乗じる。そうすると、事業者が行政手続きにかけているコストは年間8831億円とみられる。
ここから、政府の取り組みを加味したコスト削減の効果は毎年7700万時間、金額換算で1958億円となる計算だ。一度削減が成功すると、それ以降は削減効果の恩恵を毎年受けることができるため、単純計算ではあるが10年で1.9兆円ほどの経済効果が見込まれる。
これに、菅政権のもとで行政DXによる手続きの簡略化や役所慣例の改革を推進できれば、18年当時よりもコストの削減率は向上し、長い目で見れば数兆円レベルで経済効果の上乗せが期待できるはずだ。
不十分な行政DXが浮き彫りになったのは、やはり10万円の定額給付金の支給がもたついてしまったことにある。条件を満たせばオンラインで迅速な給付が受けられるはずだった今回の給付金だが、重複申請や誤植を人力で確認しており、スピーディな支給ができなかった自治体も少なくなかった。
菅政権では、行政機能としてのDXのみならず、オンライン診療や服薬、オンライン教育といった国民生活のDX促進にも取り組む方針だ。規制改革推進会議ではDX文脈のみならず、働き方に応じた雇用制度や観光再生といった重要テーマも提起する。菅政権、とりわけ河野・平井両大臣を支える“影の屋台骨”ともいうべき規制改革推進会議の動向を今後も詳細にチェックしておきたい。
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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