第1回では、ウィズコロナの時代〜オフィスの変革は、総務部にとってはまたとないチャンスであること、過去のITバブル、リーマンショック時と比べた総務の役割とその違いを簡単に説明しました。第2回では、チャンスと考えられる具体的な内容を「総務の業務 36種MAP」を見ながら解説しました。
本記事(第3回)では、具体的な業務の中で、今後のニューノーマルに向けて「攻める」べき部分と「守る」べき部分を紹介します。それらの経営効果を、財務的な観点に加え、社員のモチベーションやエンゲージメントなどの観点でも分析し、向かうべき方向性を提言します。
総務のデジタルトランスフォーメーション(DX)もその解決策の一つではありますが、それ以前に総務が取り組むべき財務基盤(予算)の整備、来年以降のニューノーマルに備えた戦略、目標設定の立て方にフォーカスします。
前回解説しました「総務の業務 36種MAP」をいま一度見直してみますと、総務部からみた上層(経営層)への職務(責務)として、リスク管理(BCP関連)、不動産管理系、イベント管理系、渉外業務などが挙げられます。
下層(社員、施設側)にはいわゆるインフラ(ワークプレースや施設系)業務、業務支援サービス(プリンティング、受付、メール業務など)、生活支援系の業務(環境、社員イベント、福利厚生など)が挙げられます。そして横には基盤プラットフォーム(管理システム、ツール、ヘルプデスク、財務など)があります。
この業務の中でウィズ/アフターコロナ、特に2021年以降、3〜5年間に「攻める」べき業務と「守る」べき業務は、いったいどの業務でしょうか。
個々の業務を考える前に、まずはプラットフォームである財務を見る必要があります。(図2)は「総務サイフ」の中身を表しています。表現方法は異なりますが、総務36種の業務がこの中にコストとして入っているとご理解ください(総務の人件費は除かれています。総務は「何でも屋」といわれる通り、コストも総務だけに閉じない「何でも屋コスト」となります)。
総務は(図2)の通り、社員1人当たり年間100万〜150万円のサイフを握っています。1000人の会社であれば、年間10億〜15億円の会社経費です。これは人件費の次に大きいといわれ、日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)によると、一般に企業の総売上の3%程度、総経費の12%程度を占めています。
その内訳を見てみますと、不動産コストが約50%を占めています。前回(第2回)でも計算した通り、例えば坪単価2万円程度のオフィスに1000人が入居、一人当たりの面積が10平方メートル程度(約3坪、ビフォーコロナの平均値)というモデルで考えると
1000人×3坪×2万円×12カ月=約7億円
──と計算できます。この数字(不動産コスト)を2倍にすると約14億円となり、前述の会社経費の数字と合致します。ただ、この不動産コストが経営的には必要悪である固定費と見られてしまう風潮がありました。
不動産コストの次に大きいものは、オフィスや施設によって異なりますが、およそはオフィスサービスのコスト(総務36種業務でいう「業務支援コスト」)やエネルギー代、清掃代メンテナンス代などがあります。
こうしたキャッシュで出ていくコストに加え、過去の造作工事や動産、不動産資産の減価償却が毎年加わります。これらが総務サイフのざっくりとした中身です。
これまではコスト削減というと、総務部が対応するのはオフィスサービス関連や庶務関連がほとんどではなかったでしょうか。非常に小さいパイの中で、総務は頑張ってコストを削減しなければならず、経営効果は限定的でした。
さて、この総務サイフの中身に今、変化が起きています。テレワークなど働き方の多様化が急激に進む中、オフィスも以前とは違った風景となりました。そうした中、どれほどの総務の方々が経営・財務的観点で戦略を立て、経営に提案できているでしょうか。
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