攻める総務

総務のサイフ、コロナで大激変 社員に「あり得ない」とは言わせない、予算を投じるべき最優先課題総務プロの「攻めと守り」(4/4 ページ)

» 2020年10月28日 07時00分 公開
[金英範ITmedia]
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 1人当たり30万円の社員サービス、これは月に換算すると1人当たり2万5000円の財源です。これほどの予算をどう使うかと考えることができるのは、私自身、25年間の総務経験の中でも初めてのことです。先輩方の話を聞く限りでも「戦後初めて」という意見が大半です。

 直近のリーマンショックのときは不動産削減額をほぼ経営から没収されましたが、それはリストラが並行して起きていたので当然の論理であり、会社が生き残るためには仕方がないと、社員も納得できました。

 しかし今回は違います。改革を余儀なくされ、当事者として苦労している社員は、コスト削減だけでは納得しません。給与だけではなく社員に投資する姿勢、働き方の多様性を支援する仕組みがあるかどうかで、会社が選ばれる時代になるでしょう。こうした動きを察知して、GAFAなどはすでにいろいろな手を打っているのもニュースで見かける通りです。

 これほどの財源で総務が攻めると、「そこまで会社がしてくれるんですか?」と社員にいわれるほど、次元の違うサービスを社員に提供できますし、さらにDXを含め、IT投資も増やせるようになります。

 ITへの投資は、1つのサブスクサービスだと、1人当たり月額500円〜1000円程度が一般的。総務コストと比べると桁が違うくらいに安く、効果が桁違いに大きいです。例えば、前述の在宅のための支援サービス、シェアオフィス、ワーケーションなど多岐に予算を振り分けられます。これは総務サイフから「ITサイフ」「人事・福利厚生サイフ」への予算の移動を意味します。この仕掛け人が攻める総務ということです。

 次回(第4回)は、攻めるための前提知識、市場の理解、そして他社のマネではなく自分の会社らしい投資戦略をどのように見つけていくのかをお話しいたします。

著者紹介:金英範

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 株式会社 Hite & Co.代表取締役社長。「総務から社員を元気に、会社を元気に!」がモットー。25年以上に渡り、日系・外資系大企業の計7社にて総務・ファシリティマネジメントを実務経験してきた“総務プロ”。

 インハウス業務とサービスプロバイダーの両方の立場から、企業の不動産戦略や社員働き方変化に伴うオフィス変革&再構築を主軸に、独自のイノベーティブな手法でファシリティコストの大幅な削減と同時に社員サービスの向上など、スタートアップから大企業まで幅広く実践してきた。

 JFMAやコアネットなどの業界団体でのリーダーシップ、企業総務部への戦略コンサルティングの実績も持つ。Master of Corporate Real Estate(MCR)認定ファシリティマネジャー、一級建築士の資格を保有。


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