莫大なカネを動かす“オンライン活動” バイデンを勝利に導いた「コロナ時代の必須戦略」とは世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)

» 2020年11月20日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5       

コロナ禍で重要度増すオンライン戦略

 さらにトランプ側が無理のあるスキャンダルを広めようとしたことや、トランプ政権の新型コロナ対策に問題があったことなどで、寄付などが集まるようになり、一気に勢いを増した。また8月にハリスを副大統領候補に指名した後は、前代未聞の、24時間で2600万ドルの寄付を記録している。8月は特に寄付の勢いは止まらず、8月だけで2億ドル以上の寄付を集めている。結局、今回の選挙戦では、オンラインでのキャンペーンに力を入れたバイデン陣営がトランプ陣営を圧倒するほどの資金を得て、オンラインを中心に優位に選挙戦を進めたのだった。(参考:キャンペーンWebサイト

 一方のトランプ陣営は、新型コロナを過小評価し、オンラインと実際の選挙活動が中途半端になり、思うように寄付を集めることができなかった。トランプが敗れた大きな敗因の一つになったと考えられる。

 このように、バイデン陣営のオンライン選挙戦略はコロナ禍のおかげで徹底したものとなり、勝利に大きく貢献している。そして、こうした活動からビジネスパーソンが学べることは少なくない。

 世界はコロナ禍で大きく変わった。そんな時代には、ビジネスにおいても皆が思っている以上にオンラインでの活動が非常に重要になる。バイデンは、オンライン選挙活動で参加者をどんどん迎えられるプラットフォームを作り、寄付などのカネを生み、それを元手にさらに陣営がオンラインツールを使って有権者にリーチできるようにした。

 インターネットやSNS、SMSやメッセージングアプリを使えば、ビジネスの営業・PR的な活動は全てオンラインでできてしまう。事実、ほぼオンラインだけで世界唯一の超大国である米国の大統領選に勝利したのだから、それ以上の有効性の証明はない。オンラインのプラットフォームで活動が回っていくエコシステムを作ることで、オンライン上ではビジネスが効果的に回っていくのだ。

 もはやショーと化した大統領選だが、水面下の動きを見るとビジネスパーソンにも学べることは少なくないのである。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


前のページへ 1|2|3|4|5       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.