莫大なカネを動かす“オンライン活動” バイデンを勝利に導いた「コロナ時代の必須戦略」とは世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)

» 2020年11月20日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

「Slack」で支持者を動かす、情報共有や協力を密に

 まずあらためて言うが、今回の大統領選は前例のない選挙戦だった。新型コロナウイルスの蔓延によって、両陣営とも、伝統的な選挙活動を思うようにできなかったからだ。本来なら、全米各地で活発に集会やイベントを実施したり、自宅訪問などを行って、支持者を固めたり、浮動票を取り込んだりする。

 普段から「マスクはいらない」「ビジネスを殺すロックダウン(都市封鎖)はいらない」「ウイルスは消えて無くなる」と主張していたトランプ大統領の陣営は、規模は縮小しながらも自宅訪問などは行っていた。だが新型コロナを深刻な脅威とし、トランプと全く逆の立場を主張をしていたバイデン陣営は、集会だけでなく自宅訪問などもほとんど実施しなかった。選挙の追い込みとなる10月以降は、いくつかの絞った地域だけに限定して訪問などを行ったくらいだった。

 そこでバイデン陣営が強化したのは、オンラインによる選挙活動。というよりも、今回バイデンの選挙キャンペーンのほとんどはオンラインが中心となっていたと言える。

 そのオンライン選挙活動とはどんなものだったのか。

 例えば選挙活動に欠かせないボランティアをオンラインで効率的に組織した。ビジネス向けチャットの「Slack」を使って、ボランティアのチャンネルを作り、ボランティア同士が協力したり、活動の仕方をトレーニングしたり、有権者に向けた電話やメッセージのボランティアに効果的に参加できるような情報を共有したりできるようにしていた。企業の活動でも、多くの協力者を動員するには、こうした自発的に学べるようなプラットフォームは有効だろう。

 また、2017年から民主党支持者のデジタルプラットフォームとなっている「Mobilize(モビライズ)」に登録している400万の有権者なども動員。もともとモビライズはデジタルではなく、実際の集会を組織するようなプラットフォームだったが、それを新型コロナ以降はデジタルに変えた。バイデンの動向などをアップデートするようなイベントはオンライン上で行われ、支持者らはネット上で参加できるようになっていた。多い時で、4日間に8000件ものイベントが行われた。

 この活動は、3月以降、3倍に増えているという。それに加えて、非常に限定的に実際の集会も組織している。

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