上場延期で衝撃、中国・アントを知る5つのキーワード浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(5/6 ページ)

» 2020年11月19日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

4.ユーザー10億人、年間決済額は1800兆円

 アントが上場申請時に提出した目論見書によるとアリペイは10億人のユーザーを抱え、20年6月の月間アクティブユーザー(MAU)は7億1100万人だった。サービスを利用する事業所は8000万を超え、2000以上の金融機関が業務提携している。アリペイはモバイル決済機能だけでなく、アプリ内アプリ「ミニアプリ」が100万以上あり、配車や旅行、出前などミニアプリでの取引を含めると、20年6月までの1年間で、アリペイ上で行われた決済額は118兆元(約1800兆円)に達した。

アントが上場申請時に提出した目論見書

 アントはAIとビッグデータを利用し、個人と零細事業者に銀行より利便性の高いサービスを提供し、債権の回収率も高い。

 15年に正式リリースした信用スコア「芝麻信用(セサミクレジット)」は、アリババのECサイト、アントの金融サービスの利用状況、さらには警察や公共機関と連携し、光熱費や家賃の支払い、引っ越し、交友関係も含めた膨大なデータからユーザーの信用を350〜950の範囲で数値化。信用スコアが高い顧客に対し、敷金やデポジットの免除、料金の後払いなどの優遇措置を提供する。

 また、従来金融機関に相手にされなかった個人と零細事業者の返済能力をAIが審査し、無担保で融資を行うサービスも開発した。ユーザーが融資を申請すれば、AIが数秒で審査し、融資限度額や利率などの結果を示して、即座に入金する。

 目論見書によると、20年6月30日までの1年だけでも個人の5億ユーザーがアント経由で融資を受け、その額は1兆7320億元(約27兆円)。30日以上の延滞率は1.56%、90日以上は1.05%にとどまった。

 アントの融資プラットフォームは消費者向け、零細事業者ともに中国トップとなっている。また、同社は金融機関と提携した投資商品や保険商品の販売プラットフォームも手掛けており、目論見書によると20年6月末時点で、オンラインで運営する投資商品の資産管理額は4兆986億元(約64兆円)だった。

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