アリババとシャオミの寵愛受けた「小鵬汽車」が描く“呂布”テスラを倒す道浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(1/4 ページ)

» 2020年09月03日 16時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

 2018年、19年と冬の時代が続いていた中国のEV業界が、コロナ禍を機に活気づいている。7月30日にナスダックに上場した理想汽車に続き、8月27日には小鵬汽車が米ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した。7月1日に米テスラの時価総額がトヨタ自動車を抜いて初めて自動車業界首位になり、8月末時点でトヨタの2倍近くまで上がっているが、18年9月に中国新興EV勢として初めてNYSEに上場した蔚来汽車(NIO)の時価総額も、2年で4倍になっている。

「小鵬汽車」のWebサイト

 10年代に、EV車生産を目的に中国で設立された企業は、ガソリン車からEVへの転換を図る既存メーカーとは資金力や人材など全ての条件が違うため、「新興EVメーカー」と呼ばれる。コロナ禍を追い風に変え上場にこぎつけた、先の中国3社は、共闘しながらテスラとの差を縮めようとしている。

中国自動車メーカーは「3+3+3+3」になる

 新型コロナウイルスの存在が公にされる直前の今年1月初旬、フードデリバリー業界首位でシェア自転車モバイクを傘下に持つ美団点評(Meituan Dianping)の王興CEOが、SNSのウェイボ(微博)で「中国の自動車メーカーは3+3+3+3に集約され、そこから3〜6社に淘汰される」と投稿した。

 王CEOは「3+3+3+3」の内訳を「国有企業の第一汽車、東風汽車、長安汽車」「地方国有企業の上海汽車、広州汽車、北京汽車」「民営企業の吉利汽車、長城汽車、BYD」、そして新興EVメーカーの「蔚来汽車(NIO)、理想汽車、小鵬汽車」と説明した。

 最後の新興EVメーカーの構図については、中国の最大手検索ポータルのバイドゥ(百度)が出資する威馬汽車の創業者で、自動車メーカー出身の瀋暉氏が「3社残るとしたら、その1社は当社だ。王CEOと賭けてもいい」と応じるなど、大きな話題を呼んだ。

 この頃は確かに威馬汽車の方が理想汽車より評価が高かった。王CEOが挙げた3社の創業者はいずれもIT業界出身で同CEOと交流があったことや、王CEOが理想汽車の株主だった事実から、専門家からは「情が入った希望的観測」との指摘も出た。

 その投稿から8カ月。王CEOの見立て通りに事は動いている。NIOの株価は急反発し、ダークホースだった理想汽車が上場し、小鵬汽車も続いた。

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