設立4年で新車を発売し、6年で上場した小鵬汽車は新興EVメーカーとしては極めて順風満帆に見えるが、少ない初期コストで事業を始められるIT企業に比べると、ハードルは高く、多かったようだ。
19年10月、NIOが4〜6月期に32億8577万元(約500億円)の純損失と、業績改善のためのリストラを発表した後、「NIOの李斌CEOは19年の最も悲惨な人物」という記事が拡散した。何CEOはウェイボで記事を引用し、「ローマは一日にしてならず。アリババ、テンセント、ファーウェイも数々の苦難を経て今日がある。今日は一番悪い日で、明日が新たなスタート。ある節目だけを捉えて結論を出すべきではない」と、李CEOにエールを送った。
NIOの李斌CEO、理想汽車の李想CEO、そして小鵬汽車の何小鵬CEOはいずれもIT企業の起業経験がある連続起業家であり、年齢も近い。コロナ禍で潮目が変わり、3社の事業に光が見えた今年6月、何CEOは3人が肩を組む写真と、三国志の登場人物である張飛、関羽、劉備が呂布と戦う「三英戦呂布」のイラストをウェイボに投稿した。
何小鵬CEOは今年6月、理想汽車、NIOのCEOと写った写真をウェイボに投稿した
三国志の中でも圧倒的な武勇を誇る呂布に、テスラのイーロン・マスクCEOを、そして呂布と戦う3人に自分たちを重ねたと世間は受け止めた。
何CEOは強大な「呂布」に劉備、関羽、張飛が挑むイラストも投稿している
これまで数社の中国EVメーカーが「テスラキラー」ともてはやされたが、実際の実力差は歴然としている。テスラと戦う前に、まずは商品を発売し国内で生き残らなければならない。NIO、理想汽車、小鵬汽車は上場し一歩抜け出したが、有力EVメーカーは他にもある。
現在の中国の新エネ車市場は10年前のスマホ市場に近く、メーカー、消費者ともに未成熟で、その分可能性も大きい。シェア争いではなく、市場を大きくするステージでもある。一緒に写真に写った3人は、テスラとの戦いはもう少し先になると見て、当面は互いに棲み分けを図りながら、爪を研ぐつもりなのだろう。
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。 最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」 (小学館新書)。twitter:sanadi37 。
異色の高卒起業家が率いるEVメーカー「理想汽車」、理想を捨て実現したIPO
7月30日にナスダックへ上場した、中国EVメーカー「理想汽車」がナスダックに上場した。2014年に中国で多数設立されたEVメーカーがコロナ禍で次々と破綻するなか、今回の上場で一歩リードし、テスラのライバルを名乗る資格を手にしたと評されている。IPOに至る道のりをを通して、中国マーケットの豊かさと厳しさを紹介したい。
「倍返しより転職しろ」「メガバンクは修羅の世界」半沢直樹にはまる中国人の突っ込み
TBSドラマ「半沢直樹」の続編が中国でもブームで、中国最大の書籍・ドラマレビューサイトでは、10点満点で9.4点をマーク。「勧善懲悪」の分かりやすさが幅広く人気を集める理由だが、結果として、日本の企業文化に対する衝撃や誤解も視聴者から湧きあがっている。ここでは、中国のSNSやブログで続出している突っ込みと考察を紹介したい。
米国のWeChat禁止令で「ファーウェイが伸びアップルが失墜」の可能性
トランプ米大統領が8月6日、「TikTok」のバイトダンス、「WeChat(微信)」のテンセントとの取引を、9月下旬から禁止する大統領令に署名した。TikTokは想定内だが、サプライズなのがテンセントだ。WeChatがアプリストアから削除されれば、iPhoneの出荷台数は25%以上減少するとみるアナリストもいる。
英が一転5G排除、中国ファーウェイに迫る次の「Xデー」
7月14日、英政府が5G通信網からファーウェイを排除すると発表した。欧州各国はアメリカによる同社排除以降、中国との関係を深めたが、コロナ禍で悪化した対中感情などが背景にあると見られる。また同社は2020年前半の決算を、英政府発表の前夜午後11時すぎにひっそりと発表しており、カナダで拘束中の孟副会長の2度目の審理日「Xデー」が近いともされている。
中国でも評価割れる日本のGo To キャンペーン、「第2波の中で無謀」「観光業救う苦肉の策」
日本政府のGO To キャンペーンを中国メディアが報じたが、評価が割れている。キャンペーンの背景にある観光業界救済へ理解を示しつつも、コロナ感染対策の側面では無謀ともしている。一方中国はコロナ感染をほぼ収束させ、北京市は7月20日に市内の観光施設などの入場制限を緩和し、同市をまたぐ団体・パック旅行の販売を解禁した。中国では、感染ルート特定が行動の抑止力になっている。
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