アリババとシャオミの寵愛受けた「小鵬汽車」が描く“呂布”テスラを倒す道浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(4/4 ページ)

» 2020年09月03日 16時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]
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イーロン・マスクを呂布に例える

 設立4年で新車を発売し、6年で上場した小鵬汽車は新興EVメーカーとしては極めて順風満帆に見えるが、少ない初期コストで事業を始められるIT企業に比べると、ハードルは高く、多かったようだ。

 19年10月、NIOが4〜6月期に32億8577万元(約500億円)の純損失と、業績改善のためのリストラを発表した後、「NIOの李斌CEOは19年の最も悲惨な人物」という記事が拡散した。何CEOはウェイボで記事を引用し、「ローマは一日にしてならず。アリババ、テンセント、ファーウェイも数々の苦難を経て今日がある。今日は一番悪い日で、明日が新たなスタート。ある節目だけを捉えて結論を出すべきではない」と、李CEOにエールを送った。

 NIOの李斌CEO、理想汽車の李想CEO、そして小鵬汽車の何小鵬CEOはいずれもIT企業の起業経験がある連続起業家であり、年齢も近い。コロナ禍で潮目が変わり、3社の事業に光が見えた今年6月、何CEOは3人が肩を組む写真と、三国志の登場人物である張飛、関羽、劉備が呂布と戦う「三英戦呂布」のイラストをウェイボに投稿した。

何小鵬CEOは今年6月、理想汽車、NIOのCEOと写った写真をウェイボに投稿した

 三国志の中でも圧倒的な武勇を誇る呂布に、テスラのイーロン・マスクCEOを、そして呂布と戦う3人に自分たちを重ねたと世間は受け止めた。

何CEOは強大な「呂布」に劉備、関羽、張飛が挑むイラストも投稿している

 これまで数社の中国EVメーカーが「テスラキラー」ともてはやされたが、実際の実力差は歴然としている。テスラと戦う前に、まずは商品を発売し国内で生き残らなければならない。NIO、理想汽車、小鵬汽車は上場し一歩抜け出したが、有力EVメーカーは他にもある。

 現在の中国の新エネ車市場は10年前のスマホ市場に近く、メーカー、消費者ともに未成熟で、その分可能性も大きい。シェア争いではなく、市場を大きくするステージでもある。一緒に写真に写った3人は、テスラとの戦いはもう少し先になると見て、当面は互いに棲み分けを図りながら、爪を研ぐつもりなのだろう。

筆者:浦上 早苗

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37

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