上場延期で衝撃、中国・アントを知る5つのキーワード浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(2/6 ページ)

» 2020年11月19日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

1.ECの信用を補完するために生まれたサービス

 アントは「アリババの金融子会社」、QRコード決済「アリペイ(支付宝)」の運営会社と説明されることが多いが、同社が設立されたのはスマホ誕生以前の2004年だ。一方、アリペイの競合でテンセント(騰訊)が運営する「WeChat Pay(微信支付)」は13年にサービスを開始した

アリペイ(支付宝)のWebサイト(リンク

 ローンチ時期が9年違うのは、WeChat Payがスマホ向けメッセージアプリ「WeChat(微信)」の派生サービスとして開発されたのに対し、アリペイはメルカリのような個人間取引プラットフォーム「タオバオ(淘宝)」の決済手段として生み出されたからだ。

WeChat Pay(微信支付)のWebサイト(リンク

 1999年に創業したアリババは同年、企業間の取引プラットフォーム「アリババドットコム」を開設、03年にタオバオをリリースした。

 両サービスは当初、商品を落札した後の出品者・落札者のやり取りを当事者へ完全に委ねていた。アリババドットコムはローンチ後数年、オンライン上で取引が成立した後に直接顔を合わせて商品やお金のやり取りをする手法が主流で、近場の人との取引がほとんどだったという。個人間取引のタオバオは、企業間よりもさらに信用が担保しづらく、「説明や画像通りの商品を受け取れるか」「お金を払ってもらえるか」に大きな不安がある。信用を高めるために開発されたのが、アリペイだった。

 取引成立後、落札者は銀行口座を通じて仮想口座「アリペイ」に入金する。入金が確認されると出品者は商品を発送する。落札者が無事商品を受け取り、タオバオに連絡すると、アリペイから出品者に代金が支払われる仕組みだ。

 タオバオの取引の安全性を担保するために生まれたアリペイだが、ユーザーのお金をプールすることで、膨大な取引データも取得できるようになり、その後、フィンテックや信用スコアなどの革新的なサービスにつながっていった。

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