世界最大のECセール「独身の日(ダブルイレブン)」が中国で始まった。例年のセール日は11月11日の1日だが、今年は11月1〜3日と11日の計4日間に増えた。この数年の同セールはインターネット人口やEC人口の頭打ちもあり、話題づくりに腐心していたが、コロナ禍の「ニューノーマル」が、商戦の構造を組み立て直す好機になっている。ここでは、セールの歴史をおさらいしつつ、今年の動きを紹介したい。
アリババのECサイト「Tmall(天猫)」は2019年の独身の日セールで、過去最高の2684億元(約4兆2000億円)を売り上げた。米国最大のネットセール「サイバーマンデー」19年の流通総額(推定約94億ドル、9900億円)の4倍に達する。
そもそも11月11日のセールがなぜ「独身の日セール」と呼ばれるのか。11月11日は「1」が4つ並んでいることから、中国では「独身の日」(光棍節)と呼ばれ、大学生などが合コンやパーティーを開いていた。公的な祝日ではなく、バレンタインデーのようなイメージだ。
消費者向けECを展開していたアリババが、独身の日に引っ掛け、「パートナーがいない人はネットショッピングを楽しもう」と最初にセールを実施したのが09年。それから間もなく、中国ではスマートフォンやインターネットが爆発的に普及し、独身の日セールは数年で市民権を得た。
12年ごろには、消費者が11月10日深夜からPCやスマホの前で待機し、徹夜でネットセールに参戦する光景が社会現象になり、中国EC2位のJD.com(京東商城)やスマホ大手のXiaomi(小米科技)など他社が加わり、国を挙げたネットセールへと拡大していった。日本で報道されるのはアリババのECサイトの売上高(流通総額)だけだが、今やECを手掛ける事業者は軒並みセールを実施しており、さらに巨額な売り上げが発生している。業界2位のJD.com(京東集団)も19年の同セールで2044億元(約3兆1000億円)を売り上げている。
今の中国でも11月11日と聞いて元々の意味の「独身の日」と思い浮かべる消費者は少なく、中国ではネットセールを意味する「双十一」という言葉の方が多く使われる。同セールが日本で「独身の日」「シングルデー」「ダブルイレブン」と複数の呼び方がされるのはそういう事情だ。
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