攻める総務

FAX廃止、受付電話廃止、代表電話は外注 なぜマネーフォワードは総務部を解体したのか?アフターコロナ 仕事はこう変わる(3/3 ページ)

» 2020年11月27日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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総務の知識をデータ化する

 坂氏がマネーフォワードに入社したのは5年ほど前だ。当時から、総務部はなくせるのではないかという構想を持っていたという。バックオフィスの細かな業務を担うのが総務なのだから、業務を細分化すれば他の部署が担える体制にできるのではないかという考えだ。また、組織が大きくなると各部署でアシスタントを使用することから、各組織にこぼれ落ちた業務、いわゆる庶務業務を任せられるのではないかと考えた。

 もともと総務部が持っていた機能を徐々に分掌し、最後に総務部自体も解体したわけだが、こうした取り組みを実現するには重要な点が2つあるという。

 1つは総務部が持っている暗黙知をデータ化すること。総務担当は創業当初からずっとその役割を担ってきた人も多く、会社の生き字引になっている人もいる。「分からないことがあれば、総務の人に聞け」という具合だ。総務部を解体するには、この定型化されていない業務を、できる限りマニュアル化してデータベースに入れる必要がある。

 「会社の知識を、人に頼る状態だったのが、チャットボットなどの情報共有ツールができて個人で解決できるようになってきた」と坂氏は言う。総務の元担当者には、よく相談されることをデータ化して、可視化していくことを業務ミッションに据えてきたという。

 もう1つは企業文化だ。総務の業務を他部署に分掌するとなると、どうしても業務を受け取る部署からは反発がある。なぜコピー機の紙の補充をウチがやらなければいけないんだ? という話が出てくることは想像に難くない。同社では、全社最適を図ったあとに部門最適を行うという風土があり、これが部門間の対立を産まずに効率化を成し遂げられた秘けつだという。

マネーフォワードの新しい三田オフィスのフリースペース(マネーフォワード提供)

 コロナ禍で企業のDX化は、想定よりも5年早く進んだとよくいわれる。一方で、働き方が変わるとオフィスが変わり、オフィスが変わると関連する組織も変わる。今後、総務部解体までいかなくても、総務部の仕事の在り方が見直されるようになっていくのかもしれない。

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