次に導入したのが、パソコンにUSBで接続して活動量を転送できる歩数計だ。これなら手間いらずでデータを記録できる。しかし、これも定着することはなかった。というのは、パソコンにUSB接続するたびに、情報漏えいを防止するためのセキュリティ機能が起動し、データの転送作業に手間と時間がかかったのだ。
このような失敗を経て「社員に行動変容を促すための『仕掛け』がないと何事も続かないということが分かった」(丹羽氏)。そこで実施したのが「簡単」「楽しい」「続けたくなる」という3つの考え方を取り入れた取り組みだった。
・ICカード型社員証と一体化した活動量計を自社開発
ICカード型社員証(FeliCa)と活動量計を合体させてしまえば、平日は、朝、出勤してから、夜、退勤後自宅に戻るまで必ず携帯するだろうという作戦だ。社員証と一体化しているので、活動量計がないと入館できないだけでなく、複合機でコピーや資料印刷することすらままならないのは、冒頭で述べた通りだ。
活動量計と社員証を合体させることで常に携帯を習慣化するもくろみは見事成功。しかし、社員証をうっかり忘れてしまったら、どうなるのか気になるところだ。総務課課長の南佑司氏(兼人事課)によると「(忘れた場合は)レンタルするようにしている。月に2〜3件程度しか発生しない」。また、活動量などのデータのアップロードもパソコンのカードリーダーにかざすだけなので簡単に実施できるという。
ただ、社員証一体型ゆえの課題もあるそうだ。「活動量は休日も記録してもらいたいのだが、顔写真入りの社員証なので、プライベートな時間に首からぶら下げるのは抵抗がある人が多い」(丹羽氏)というのだ。それでも、週末の携帯率は「約8割を確保している」というから、意識の高い社員が多いことがうかがえる。
・ポイント還元で人参ぶら下げ作戦
社員証一体型活動量計から吸い上げた社員のデータは、サーバで管理されているが、モチベーションを維持するためのさまざまな“イベント的な仕掛け”が設けられている。その一つが、健康ポイントの導入だ。
健康ポイントというのは、健康宣言(目標設定)の実施、目標歩数を達成、体組成計での測定、社内運動施設の利用などの、自らの健康に関連するアクションに応じてポイントがたまる仕組みだ。ポイントがたまると、Amazonのギフト券、WAON、カタログギフトなどに交換できる。
まさに、鼻先に人参をぶら下げて健康へのモチベーションを喚起しようという作戦だ。ポイントのたまり具合は、常にパソコンやスマホからチェックできるので、継続的にやる気を引き出せる。その逆に、サボった人には何らかのペナルティが課されるのかと思いきや「頑張った人にはご褒美はあるが、(そうでなくても)ペナルティはない」(丹羽氏)そうだ。
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