インフレという言葉は、日本ではすでに馴染みが薄くなっている。長らく続いたデフレ脱却もままならない中、人々がインフレを経験したのは40年以上前だ。そのため、「可能性を低く見積もってしまう。しかし、いつインフレが来てもおかしくない」と重見氏は警鐘を鳴らす。
同社最高投資責任者(CIO)の丸山隆志氏も、「インフレの話は日本では取り上げられないことが多い。日本では絶対起きないだろうというイメージがある。しかしグローバルの会議では、インフレの話はよく出てくる」と現在の状況について話す。
通常、インフレが懸念されるような状況では中央銀行は金利を引き上げて、経済の引き締めに入る。すでに銅の価格、農産物の価格も上がってきており、金利が上がってもおかしくない。しかしワクチン開発の希望が出てきたとはいえ、収束の見えない中では、利上げはなかなか難しい。
「FRB(米中銀)は、実質金利をマイナスに長くとどめておきたいと考えている。長期金利が上がってしまうと、実質金利がゼロになってしまう。ハイテク株が下落するような局面では、さらなる引き下げに動くだろう」(重見氏)
インフレが懸念されるのはコロナだけの影響ではない。平和と繁栄が続き経済成長が進む中、人々の間では格差が拡大した。そんな中、政府の債務は返済されることなく、ゆっくりと積み上がってきた。日本の債務残高はGDP比で230%以上に達しており主要先進国の中で最悪だ。しかし、米国でも「今の債務水準は第二次世界大戦並に拡大している」と、重見氏は世界各国が似た状況になってきていることを指摘する。
理想的には、富裕層に税金を課して歳入を増やし、社会福祉などを削減して歳出を減らすのが債務削減の方法になる。しかし、富裕層は増税を嫌がり、歳出を削減するとさらに格差が拡大してしまう。「取るべきところからは取れない、お金を出さざるを得ない。結果として貨幣発行に頼ることが続く」(重見氏)
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