ビジネスパーソンも標的 高度技術を狙う、中国「ハニートラップ」の実態世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

» 2020年12月17日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

SNSを駆使して接触してくる可能性も

 このニュースを受け、米国では元スパイらがメディアの取材を受け、中国政府によるハニートラップの実態を明らかにしている。それによれば、米国内でのハニートラップは数多く現在も進行しており、元CIA(中央情報局)の関係者はその数が数百に上ると語っている。

 接触方法はさまざまだが、若くてきれいなスパイが、完璧な英語を使いながら偶然を装って接触してくる。例えば、大学で教員や学生、研究者などとのつながりからターゲットに接近したり、SNSで接触したりして関係を築いていく。そして色恋沙汰を利用し、肉体関係になるなどして、スパイ行為につなげていく。肉体関係をネタに脅迫されるというケースも昔から使われてきたやり方だ。

 さらにターゲットなるのは政治家だけではない。米国企業から知的財産を盗もうとするスパイ工作は、米国に年間2250億ドルから6000億ドルの損失を与えているといわれている。もちろん、そうした工作にハニートラップも使われているという。

 こうした方法は米国だけでなく日本でもあり得るし、SNSを使った接触も日本でも十分に起き得る。オフ会や転職活動などで知り合っても今の時代は不自然ではないし、そこに「ちょっと変わった」人がいてもあまり気にならないだろう。たまたま国際会議などで知り合いになるというのも常とう手段だ。

SNSなどを使って接触される可能性も十分にある

 ハニートラップについては、インドからも興味深い話が出てきている。ご存じの通り、インド政府はライバルである中国の影響力を削ぐために、インド国内で大量の中国製アプリの使用を禁止した。これまで200以上のアプリが使えなくなったが、実は、そのうちの15以上のアプリはいわゆる「出会い系」であり、そうしたアプリが中国によるハニートラップでも使われている。

 インド陸軍はハニートラップを「ハイブリッド戦争」の一手段だと捉えている。ハイブリッドとは、通常の武器による戦争に加え、他の手段と組み合わせて敵国を攻撃をすることを指す。つまり、インドはハニートラップを戦勝の手段だと見ているのである。

 そんなことからインド軍ではハニートラップを警戒して、兵士たちにSNSで写真を掲載しないよう命じている。インド軍によれば、兵士がアップした写真に魅力的な女性が「いいね」や好意的なメッセージを送るなどして油断させ、武器を持っている写真や基地内の写真などを入手しようとするという。実際に19年1月には、50人のインド兵がFacebookで知り合った美しい衛生兵に機密情報などを提供していたことが判明し、何人も逮捕者が出た。この女性衛生兵はインドの永遠のライバルであるパキスタン人スパイ工作員だったと見られている。

 インドではつい最近も、ビジネスパーソンを狙ったハニートラップのケースが何件もニュースになっていて、社会でも関心事となっている。

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