ビジネスパーソンも標的 高度技術を狙う、中国「ハニートラップ」の実態世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2020年12月17日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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日本人の警戒心は低い、誰しもターゲットになる

 そもそも、近年も世界中で中国のハニートラップが警戒されてきた。11年にはフランス当局が中国の「美人な女性スパイ」には警戒するよう呼びかけている。実際にフランス企業の幹部などが被害にあっていたからだ。同じ頃、英国も、中国政府がハニートラップで企業関係者に接触して、そこを足掛かりにサイバー攻撃やハッキングをしていたと非難した。

 また16年には、オランダの新米外交官が中国へ赴任してから、まんまと中国人女性のハニートラップに引っ掛かって情報が盗まれたケースも発覚している。

 カナダ政府も今年3月、国外に出張するビジネスパーソンなどにハニートラップには注意するよう呼びかけている。

 また米FOXニュースは、「英国で今年明らかになった文書では、中国国内で、トランプ米政権に安全保障の懸念で禁止措置にされた5G関連の中国企業であるファーウェイの利益になるよう、(英国などの)大物に対してハニートラップが使われている」と報じている。

 中国は国家的な目的のために、ハニートラップを駆使しているということだろう。

 そしてハニートラップは、日本も他人事ではない。

 同じ東アジア系の見た目で、文化も近いこともあり、そこにスパイが紛れていても不思議ではない。また日本人の警戒心は低い。別のアジアの国出身であると言いながら、接近してくる可能性だってある。そうして知らぬ間に、ハニートラップのわなに陥る危険性もある。日本も他国同様に、出会い系のアプリなどを多くの人が利用している。そういうところから接触が始まるケースもある。

 特に高い技術を持つ企業や、重要情報にアクセスできる社員などはもちろんのこと、誰しも自分がターゲットになる可能性があると認識しておいたほうがいいだろう。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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