新時代セールスの教科書

「新人の案件獲得数が5倍以上」 営業人材の育成を支える“セールステック”と“スキルの可視化”(1/2 ページ)

» 2020年12月25日 07時00分 公開
[吉村哲樹ITmedia]

 「新卒が一人前に育つまでの期間が長引けば長引くほどその間の収益を圧迫しますし、第一お客さまに提供できる価値も下がってしまいます」──こう語るのは、パーソルプロセス&テクノロジーの加藤雄大氏(セールスマーケティング事業部 営業推進部 マーケティンググループ マネジャー)。セールスマーケティング事業において新卒採用を始めてからは、常に「新人立ち上げのリードタイム短縮」が大きな課題だったという。

 パーソルプロセス&テクノロジー(以下、パーソルP&T)は、大手人材企業グループのパーソルグループにおいて、アウトソーシングサービスやコンサルティング、システム開発などの事業を担う企業だ。アウトソーシングサービスでは、情報システムの運用管理やヘルプデスクといったICT関連の業務が中心を占めるが、近年では営業やマーケティング領域に力を入れている。

 セールスマーケティング事業部では事業の成長に伴い、2014年から新卒の配属を行うようになった。例年15〜20人の新人が配属しているものの、営業経験はおろか社会人経験も一切ない新人を一人前の人材に育て上げ、クライアントの案件を任せられるようになるまでにはかなりの時間と手間を要しており、新人育成の早期化・効率化が急務だったという。

photo 平光研介氏

 そしてもう1つの課題が、「人材スキルの平準化」だった。クライアントに質の高いアウトソーシングサービスを提供するには、人材一人一人のスキルに大きなばらつきがあってはならない。しかし平光研介氏(セールスマーケティング事業部 セールスソリューション統括部 統括部長)によれば、従来の人材育成方法は、全ての要員のスキルを平均的に底上げできるものでは必ずしもなかったという。

 「営業のような仕事は個々人のスキルや資質に頼りがちで、どうしても仕事の質や量にばらつきが出やすい面があります。そこでトップセールスのノウハウを可視化・共有することで全体の底上げを目指すやり方も試してみましたが、トップセールスのノウハウは平均的な人材にはそのまま適用できないことも多く、必ずしもうまくいくとは限りません。そうではなく、平均的なレベルの人材が取り組みやすい方法で、かつ確実に成果が上がる育成方法が求められていました」(平光氏)

 新人育成の早期化・効率化と、営業スキルの平準化という人材育成に関する2つの課題を、パーソルP&Tではどのように解決しているのだろうか。話を聞いた。

セールステック活用で新人の「案件獲得数が5倍以上」

 新人育成のため平光氏らが着目したのが、ITツールを活用して営業課題の解決を目指す「セールステック」の取り組みだった。同社は現在、電話による商談で案件を獲得するインサイドセールスのアウトソーシングサービスに力を入れているが、電話を通じた顧客とのやりとり内容は第三者から見えずらいため、改善ポイントをなかなか指摘できない。そこで新たにCTI(Computer Telephony Integration)の仕組みを導入。システムを通じて電話の内容をリアルタイムでモニタリングしたり、会話内容を自動録音して後で内容を振り返ったりできるようにした。

photo 尾崎舞氏

 具体的には、RevComm(東京都渋谷区)が開発・提供するクラウドIP電話サービス「MiiTel」(ミーテル)を導入し、まずは新人研修の場で活用してみることにした。MiiTelは電話の内容を録音・モニタリングできるだけでなく、AIで会話内容を解析することでさまざまな角度から可視化・分析できるサービス。同製品を使った新人研修で講師を務めた尾崎舞氏(セールスマーケティング事業部 セールスソリューション統括部 セールスコンサルティング部)は、その導入効果について次のように述べる。

 「実際に電話を使ったセールストークの実践トレーニングを行うのですが、講師が受講者の口癖を指摘しても当の本人は『本当にそんなこと言っていますか?』と半信半疑なことも少なくありません。でもMiiTelは電話のやりとり内容を自動的に文字起こししてくれますから、それを見せれば一目瞭然で納得してくれます」

photo 実際に活用しているMiiTelの管理画面。新人と顧客のやり取りが確認できる
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.