新時代セールスの教科書

「新人の案件獲得数が5倍以上」 営業人材の育成を支える“セールステック”と“スキルの可視化”(2/2 ページ)

» 2020年12月25日 07時00分 公開
[吉村哲樹ITmedia]
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 また毎朝、新人が前日に「自分が最もうまく話せた」と感じたトークの録音データを持ち寄って、互いに評価し合うというカリキュラムを導入したところ、非常に高い学習効果を発揮したという。このように、これまでの研修では講師から一方的に指摘されるだけだったのに対して、客観的なデータを持ち込むことによって、新人がより納得感を得られる形で欠点や改善ポイントの指摘ができるようになったという。

 こうして新人研修で高い導入効果を確認できたため、その後は実際のインサイドセールス案件の現場でもMiiTelを活用するようになった。とあるプロジェクトでは、MiiTelの導入前と導入後で案件獲得数が5倍以上まで跳ね上がった。またコロナ禍に伴うリモートワーク体制への移行に際しても、MiiTelが役立ったという。

 「MiiTelのようなCTIの仕組みを使えば、電話の会話が思うように運ばなかった場合、上長やリーダーがその内容をリアルタイムでモニタリングして、その場で指示を出すことができます。しかもこれを離れた場所にいても行うことができるので、インサイドセールス業務のリモートワーク化に際してははかなり役立ちました」(尾崎氏)

photo 電話の種別や応対結果についてもダッシュボードで分析できる

独自のメゾットで“営業スキルを可視化”

 こうした外部のツールを導入・活用するとともに、同社内でも独自に営業のスキルやプロセスを可視化する仕組みを構築している。それが「B-AEMS」と呼ばれるセールス・マーケティングメソッドで、同社がこれまで営業・マーケティング業務のアウトソーシングサービスを長らく提供してきた中で培ってきたノウハウやナレッジを体系化し、ガイドラインとしてまとめ上げたものだ。

 具体的には、営業・マーケティング業務のための基本的な行動指針や戦略策定のためのメソッドを定義した「OS層」と、それらを踏まえた上で実際に営業・マーケティング活動を展開する上で適用すべきメソッドを定義した「アプリケーション層」の二層構造になっている。

photo B-AEMSの概要

 パーソルP&Tにおいて営業・マーケティング業務に携わる者は全員このB-AEMSに習熟し、互いにこれを共通言語として用いることで早期の成長を図るとともに、実績をB-AEMSと照らし合わせることで現時点での自身のスキルやパフォーマンスを客観的に把握できるようになるという。

photo 加藤雄大氏

 「営業の仕事はどうしても属人的になりがちですから、他人から何か指摘されてもそれを素直に受け入れにくい面もあります。しかしB-AEMSという客観的な物差しに自身のパフォーマンスを当てはめることで、自ら課題に気付いて自己研究や改善につなげられるようになります」(加藤氏)

 現在はこのB-AEMSの習熟度合いを3段階のレベルに分け、それぞれを社内資格として定義している。初歩段階の「レベル1」は基礎知識の習得、「レベル2」はB-AEMSの体系全体についての深い理解、そして最上位の「レベル3」ではその実践を通じて実際の業務の場でプロジェクトリーダーとして活躍できるレベルまで到達することを目指す。こうした仕掛けを通じて社員が自ら積極的に学んでスキルを磨くカルチャーを醸成し、その結果として全員のスキルレベルが底上げ・平準化されることを狙っているという。

 「こうしてツールとメソッドをうまく組み合わせることで、社員一人一人の『個力』を磨くとともに、各人の能力のデコボコを慣らしていきたいと考えています。さらに将来的には、ツールの運用を通じてデータを蓄積し、それをAIで分析することで事業環境の将来を予測するような取り組みにもぜひチャレンジしてみたいですね」(平光氏)

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