障壁だらけのデンマークで、共同創業した20代建築家。生き残る経営戦略は若手登竜門で優勝(5/5 ページ)

» 2020年12月21日 07時57分 公開
[小林香織ITmedia]
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英国をハブにして、本格的な世界進出へ

 北欧最大のコンペで初優勝し、大御所のサポートを受けて独立。その後も現地での実績を積み重ねている2人は、トントン拍子で前進してきたように見える。とはいえ、異国で若手起業家が安定した収入を得るのは、そう簡単ではないようだ。

 「建築は1つのプロジェクトの報酬が高いぶん、コンスタントに案件を請けるのが難しい一面があります。八木が正社員として別の会社で働いていたこともあり、互いが事業にかける時間も収入もアンバランスでした。それらの課題を解決するため、自由に活動できる場所を求めて、2020年のはじめに英国ロンドンへ拠点を移しました」(高田氏)

高田一正氏

 2人は、現地で才能ある外国人向けのエクセプショナルタレントビザを取得したことから、ロンドンで3年間自由に事業ができる。その後は永住権の申請が可能だ。コペンハーゲンに比べ、より国際的な都市であり、世界中にクライアントを広げたいとの狙いもあるという。だが、そんなタイミングでパンデミックが起きてしまった。

 この冬、爆発的に感染者が増えたことから英国、フランス、デンマークなど欧州の国々はロックダウンに踏み切り、経済は破壊的な状況だと予想される。だからこそ2人は、現地に比べて経済状況が良いと予想される日本市場での拡大を見込んでいるのだ。

 「現地での案件が消滅して困っていましたが、同時期に日本企業からの依頼があり、今年から来年いっぱいは日本のプロジェクトに注力するつもりです。コロナ禍で唯一よかったのは、オンラインでの仕事が当たり前になったことで、英国にいても違和感なく国外の仕事が進行できる環境が得られたことですね」(八木氏)

 「ここ3年ほど、わけが分からなくなるぐらいの忙しさが続いていたので、一度立ち止まることができたのは、個人的によかったかもしれません。すべて白紙になったことで、2人で未来について話し合い、目指すべき姿がクリアーになった気がしています」(高田氏)

 今後、2人は自転車操業だった運営を見直し、受動的ではなく能動的な提案をしていきたいと意気込む。

 「依頼を受けて設計・建築するのではなく、僕らから都市に対して必要なスペースの使い方を提案し、プロジェクトを進行できたらと考えています。そのためにアーティストだけじゃなく起業家や社会活動家など、さまざまな領域の方とコラボレーションできたらおもしろいですよね」(高田氏)

 「私たちは、建築やデザインを通して社会により大きなインパクトを与えたいのであって、ただ設計を請け負う建築家になりたいわけじゃない。だからこそデザインをもっと広く定義して、ブランディングやコンセプト設計なども請け負えたらなと。もっとポジティブな提案ができるチャンスを増やして、自分たちのポジションを確立していきたいです」(八木氏)

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