コロナ禍でも絶好調の「焼肉きんぐ」 強さを支える「カルビ」と「包み込み戦略」とは飲食店を科学する(4/5 ページ)

» 2020年12月25日 05時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]

シェア理論から焼肉きんぐの強さを分析する

 ここで「業態マーケットシェア理論」について説明します。この理論は、当社のコンサルタントがご支援先の新店舗の売上予測や立地診断等にも活用しています。

<業態マーケットシェア理論の考え方>

 店舗年商(焼肉A店年商1億円)÷商圏内の特定業態の総売上(焼肉業態の総売上10億円)=業態マーケットシェア率(焼肉A店のシェア率10%)

 さらに分かりやすいように、今回私が訪れた神奈川県の焼肉きんぐの店舗を例にとって説明します。

<商圏人口を調べる>

 まずは、焼肉店の商圏人口を調べましょう。エリアや競合店の状況にもよりますが、郊外店の場合は既存顧客の80%が住んでいる近隣地域となります。今回訪問した焼肉きんぐの商圏人口(夜間人口)は約18万人です。

<商圏内の焼肉店の総売上を算出する>

 商圏内の焼肉店の総売上を算出する上では「業態マーケットサイズ」という考え方を活用します。これは特定業態(焼肉業態)の国内市場における総売上を、日本の総人口で割って算出します。

〈マーケットサイズを算出する〉

 焼肉業態における国内市場の総売上「5550億円」(18年度)÷日本の総人口「1億2427万1318人」=業態マーケットサイズ「4466円」

 つまり、日本国内に住む人は平均して1年間に焼肉屋さんで4466円を使っている計算になります。

 今回の焼肉きんぐのお店の商圏人口は18万人でしたので、そこに当てはめて考えてみます。

〈商圏内のマーケットサイズを算出する〉

 商圏内の焼肉店の総売上=焼肉業態のマーケットサイズ4466円×商圏人口18万人=約8億円

 つまり、この商圏内には年間約8億円の焼肉マーケットがあり、商圏内の焼肉店で奪い合っていることになります。

〈焼肉きんぐの業態マーケットシェア率を算出する〉

 次に、商圏内における競合焼肉店の店舗数を数えていきます。この商圏内の焼肉店の数は13店舗でした。単純に年間8億円の焼肉マーケットを13店舗で分け合っている場合は、1店舗の年商は8億円÷13店舗=6200万円となります。

業態マーケットシェア率出所:公式資料を基に筆者作成

 一方で焼肉きんぐの売上高ですが、同社の決算資料を分析していくと、直営店の平均年商は2.1億円。仮に今回訪問した焼肉きんぐの年商も同社平均の2.1億円とした場合、焼肉きんぐの商圏内におけるマーケットシェア率は、店舗年商2.1億円÷商圏内の焼肉業態の総売上8億円=26%となります。

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