コロナ禍でも絶好調の「焼肉きんぐ」 強さを支える「カルビ」と「包み込み戦略」とは飲食店を科学する(3/5 ページ)

» 2020年12月25日 05時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]

焼肉におけるカルビの重要性

 例えば、並カルビの値段が680円のお店と1280円のお店では、受ける印象が異なります。

 当社のコンサルタントが全国500店舗以上の焼肉店を来店調査した結果、面白いデータを発見しました。それは大抵の焼肉店は「カルビ価格×5.5=想定客単価」になるというルールです。当社ではこの「5.5」という数値を「カルビ客単価指数」と呼んでいます。

 カルビ(90グラム換算)が700円程度のお店でしたら、そのお店の客単価は700円×5.5=3850円程度。1800円の黒毛和牛カルビを提供している焼肉店の客単価は9900円程度となります。

 かつて、焼肉業態の客単価は「カルビ価格×5」程度でした。しかし、近年ではカルビの値段を低めに設定して、他メニューやアルコールを高めに提供する店舗が増えました(すでにカルビ価格が頭打ちという現状もあります)。そのため、カルビ客単価指数が「5.5」と高めになる傾向が出てきています。

 このカルビ客単価指数が「7」を超えるとどうなるでしょうか。消費者は、カルビの価格に対して、最終的な会計金額が想定していたよりも高いと感じます。この現象を私は「カルビ価格不協和」と呼んでいます。

 話を元に戻しますが、それだけ消費者は日頃から潜在的に「カルビの値段」を意識して焼肉店を訪問しています。そのため、食べ放題焼肉業態においてもカルビメニューは差別化の重要な要素になります。

 焼肉きんぐでは、カルビカテゴリーに味付けやカットを変えた8アイテムものメニューを用意して「B:焼肉(カルビ)をお腹いっぱい食べたい客層」のニーズに対応しています。さらに、一品・おつまみ系メニューに10アイテムを配置することで「C:家族で来店したけどお酒を飲みたい『お父さん』(からあげなどは、子どもが好きなメニューでもあります)」に対応。また、ごはん・麺・スープに20アイテムを配置することで「D: しっかりと食事をしたい客層」のニーズも満たしています。

 つまり「A:ぜいたくニーズ」「B:焼肉お腹いっぱいニーズ」「C:お父さんの飲みニーズ」「D:食事ニーズ」に幅広く対応することで、来店動機を高め、商圏内のシェアを高めているのです。私はこうした戦略を「包み込み戦略」と呼んでいます。カテゴリーの幅と、アイテム数を設計していくことで、競合店などの差別化要素を包み込んでいく戦略です。

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