アパレル“総崩れ”はコロナのせい? 復活に必要な6つの「シフト」カジュアル化の流れ(5/5 ページ)

» 2020年12月28日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]
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アパレル企業がシフトするタイミング

 11年にスーパークールビズへのシフトが叫ばれた際、働き方の変化も求められました。在宅勤務を推進し、残業や休日出勤を制限するだけなく、休みを多くとろうという機運が高まりました。そして、普段着での仕事に切り替えようと環境省が呼び掛けています。

クールビズとスーパークールビズの違い

 アパレル業界だけでなく、世界的に環境意識が高まりました。サスティナビリティー(持続性)を重視する潮流も出てきました。大量生産・大量消費モデルからの転換を急速に進めなければならないことを、スーパークールビズは予言していたのかもしれません。

 つまり、15年前にアパレル企業には大きくシフトチェンジするタイミングがあったのです。そして、9年前に同じようなタイミングはありました。しかし、大きなシフトチェンジをできた企業はほとんどありませんでした。その傾向は、特に旧来型のアパレル企業に共通していました。

3.11以降に対応すべきアパレル業界のスペンドシフト

 私は12年ごろから、アパレル業界に向けて次のようなスペンドシフトに対応する戦略転換を提案してきました。

  • 「賢消費」(自分を賢くするために使う)
  • 「地元消費」(地域が潤うように使う)
  • 「シェア消費」(みんなでシェアする)
  • 「つながり消費」(誰かと絆を深めるために使う)
  • 「本物消費」(信頼できる、安心できる企業から買う)
  • 「参加型・共感型消費」(自ら創造できる、参加できる人になる)

 また、これから紹介する企業やブランドは、コロナ禍でも好調です。

 例えば、米国には原価を全て公開して顧客の信頼を得ることに成功している「Everlane」があります。国内に目を転じると、日本一の雑貨小売業としてギフト需要を掘り起こした「オンセブンデイズ」や、「プロポーションづくりのダイアナ」が20年11月にデビューさせたオーガニックコスメとファッションの完全融合ブランド「THE CHIC」があります。

 今回のコロナ禍で劇的に売り上げが落ちたアパレル企業は、その戦略を見直す必要があります。定番だった「流行に左右されるような商品を作り販売する」というスタイルを根本から見直し、「どのような理念でモノ作りをして販売していくか」という企業哲学を軸にした経営にシフトしなければならないのです。

 アパレル業界に携わる方々は自分たちの存在意義に立ち返り、世の中の大きなスベンドシフトに合わせることで、自社の方向性を定めるべきです。

 オフプライス商品を販売するとか、ネット通販で売り上げを上げるといった手法に頼るのではなく、いかに自社のパーパス(存在意義)を明確に設定できるかが重要です。

 アパレル業界が本質的に変わる最後のチャンスが今なのです。

著者プロフィール

岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)

ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント

 1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。

岩崎剛幸の変転自在の仕事術


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