鉄道、宅配、コンビニ、病院が、次々とブラック化するワケスピン経済の歩き方(3/7 ページ)

» 2020年12月30日 08時30分 公開
[窪田順生ITmedia]

手厚い医療体制

 そんなGHCが12月23日に出した『医療崩壊の真実』(アキよしかわ/渡辺さちこ著、エムディエヌコーポレーション刊)には「日本の世界一手厚い医療」がうかがえるデータが多く掲載されている。分かりやすいのが「在院日数」だ。

 諸外国で急性期患者の治療にどれだけの日数を費やしているのかという平均在院日数の国際比較を見ると、ドイツや韓国が7.5日、スウェーデン5.5日、オーストラリアが4.2日と概ね1週間で退院しているところ、日本は16.2日と2倍以上も長く入院させているのだ。

 実際、諸外国では「日帰り手術」をしているような疾患でも、日本では何日か患者を入院させる。例えば、諸外国では局部麻酔での手術が多く、90%以上が「日帰り」である白内障手術も、日本の病院の場合、「日帰り」は52.9%にとどまる。

 もちろん、これは入院させたほうが病院にとって「得」になることも大きい。GHCのデータでは、白内障手術の医療費は14.7万円だが、2泊3日の入院治療だと22万円。また、欧米では外来治療が一般的なポリペクトミー(内視鏡でのポリープ切除)も、日本では外来が7.3万円、2泊3日の入院だと18.1万円だ。つまり、「世界一手厚い医療」は純粋に「患者のため」だけではなく、病院経営的なメリットから施されている部分もあるのだ。

 いずれにせよ、日本には世界一たくさんの病院が乱立して、諸外国ではありえないほど世界一手厚い医療を国民に施してくれている事実は変わりがない。

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