先ほども申し上げたように、日本の病院は世界一多くて、世界一手厚いが、人口1000人当たりの医師数は、OECD平均が3.5人のところ、日本は2.4人しかない。看護師も先進国の中では平均並だ。
そのように諸外国と比べて大して多くもない医療従事者が、世界一多い病院に振り分けられ、世界一手厚い医療を提供させられる。諸外国ではあり得ないほどのブラック労働が起きるのは容姿に想像できよう。中でも特に虐げられるのが、患者と最もよく接する看護師だ。
「第9回医師の働き方改革に関する検討会」(2018年9月3日)で配布された「諸外国の状況について」という資料の中に、諸外国の医療体制を比較した一覧がある。その「病床百床あたり臨床看護職員数」を見ると、米国は394.5、英国が302.7、ドイツが164.1、フランスが161.8であるのに対して、日本はどうかというと、83と断トツに少ない。
このように病院の医療従事者を世界一劣悪な環境でこき使ってきた国が、新型コロナを「2類相当」として感染者を公立病院や地域の急性期病院に集中させれば、どんな阿鼻叫喚の地獄となるのかは、分かりきっていたことなのだ。
そして、世界一多い病院に医療従事者が「分散」させられることの弊害も生じる。ある病院にはすさまじい数の患者が押し寄せて、医師や看護師は目が回るほど忙しいが、ある病院はコロナを恐れて患者がまったく来ないで閑古鳥が鳴いていて、医師や看護師も通常通りという「格差」ができる。
実際、GHCの調査でも今年の2〜6月にコロナ患者を受け入れていない266の病院のうち、35病院(15%)で集中治療専門医や救命救急専門医が常勤し、89病院(39%)に呼吸器内科専門医がいた。コロナ重症患者の命を救える専門知識を持つ人たちが、コロナ医療に関わっていない現実があるのだ。
これらの問題を解消するには、「医療体制の再編・統合」をしなくてはいけないのは明らかだ。
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