居酒屋などの飲食店では利用客がすでに減少しており、仕事の後にお酒を楽しむ人もほとんどいなくなってしまった。その結果、人々は深夜の電車に乗らなくなり、乗る人がいても酔客を目にすることはほとんどなく、本当に通勤で乗る人だけになっていた。
また、スマートフォンでニュースアプリを使っている人も多い。ほぼ毎日、夕方にはその日の新規感染者数がプッシュ通知で報じられ、その人数が増えていく中だと、「今夜は飲み会でも」という心理になかなかならない。そうして飲食店へ足が遠のき、それが終電時間帯の利用者減につながっていく。
スマートフォンのアプリで速報されるニュースが、人々の心理に影響し、行動の変容をうながす。コロナ禍が始まって以降、こうした状況はよく見られた。そうした中で、「仕事が終わったら早く帰ろうか」となるのは、自然なことだ。
またコロナ禍前からの「働き方改革」により、筆者がかつて働いていた会社もそれを止めるようになり、ブラックな働き方をさせている企業にはそれだけで非難が集まるようになった。
そして発生したコロナ禍。筆者がかつて会社勤めしていた企業は、信念をもって長時間労働を強いていたと思うが、このような企業以外は、長時間労働を止めるようになった。コロナ禍でテレワークが普及する一方で、職場に行く必要のある職種も労働時間を配慮するようになり、全体的に労働時間が縮小する傾向にある。
こうした背景によって、終電時間帯の電車の利用者は、すでに大きく減っていた。それゆえに、「終電繰り上げ」の混乱は起こらなかったのだ。
さらに駅での告知や、メディアなどでの報道も盛んに行われたため、鉄道利用者は繰り上げを知ることとなった。実際、本稿をスマートフォンで見ている人も多いと思うが、「終電繰り上げ」のニュースや各鉄道事業者の発表も、スマートフォンで知った人が多いのではないだろうか。
情報伝達の充実により、「終電繰り上げ」が事前に周知され、混乱は起こらなかった。その結果は、21日に新聞などで報道された通りだ。だが関東圏の1都3県で「緊急事態宣言」が発出されたのは1月8日。その後、14日から11都府県に広まった。終電が繰り上げられたのは、20日深夜だ。
なぜ、そんなに日数がかかったのだろうか。
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