まず、(1)の「小規模事業者で働く人の賃金がさらに低くなる」から説明しよう。日本のテレワーク実施率が低いのは、日本の労働者の4分の1が働く小規模事業者がなかなかテレワークにメリットを感じることができず、導入に腰が引けているから、というのはさまざまな調査で浮かび上がっている現実だ。ではこの状況は、政府が粘り強く呼びかけたり、導入支援の助成金を払ったりすればどうにかなるものかというと、その望みはかなり薄い。
拙稿『飲食店にバラまかれる協力金が、「現場で働く人」にまで届かないワケ』の中でも触れたように、日本の小規模事業者はこれまで政府から多くの振興策や助成金などの支援をなされてきたにもかかわらず、それを労働者の賃金に還元することができず、「事業存続」の原資にまわしてきたことは、さまざまなデータが物語っている事実だ。
そんな「現状維持志向」の強い小規模事業者に、「出勤者7割削減」という新たなシステムの導入をゴリ押しすれば、その皺寄せは真っ先にそこで働く労働者にいくことは、容易に想像できよう。例えば、テレワークを導入して在宅勤務を増やしたことで、これまで出していた残業代をカットする。逆に、いつでも仕事ができることを逆手にとって、時間外労働を増やすなどの問題が起きるはずだ。
もちろん、すべての小規模事業者がそんなことをするなどと言っているわけではない。ただ、多くの事業者がピンチに直面すると、労働者の賃金や待遇を「調整弁」にしてきたことは、日本の賃金が先進国の中でも際立って低い水準で固定化していることが証明しているのだ。
この「できもしない目標」を達成するために、弱い立場の人間を犠牲にする構造を、大企業にあてはめたのが(2)の「出勤削減目標達成のために派遣やバイトが犠牲になる」だ。
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