PayPayマネー? ボーナス、さらにライト? なぜ電子マネーの残高は複雑なのか(3/3 ページ)

» 2021年01月27日 08時35分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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デジタル金融サービスの進展に法は追いつけるか

 このように複数の法律により、一口に「残高」といっても種類が分かれる。複雑であり、利用者から見ると判別のつきにくい各種残高だが、落合弁護士はそのメリットもあると話す。

 「複数の類型が入り混じっているのは確かに分かりにくい面があり、事業者が説明をより一層分かりやすくしていく必要がある。一方で、いくつかの枠組みがあることで、それぞれのリスクに応じて、できることとできないことがあり、規制を合理化できる利点もある。必ずしも規制を単純化することが良いわけではない」

 ただし各サービスで呼称が異なるのは混乱を招きそうだ。残高、マネー、バリューなど呼び方は多種多様で、どれが預り金で、どれが前払い支払手段で、どれがポイントなのかは一見すると分かりにくい。企業の倒産時にも保護されるのはどれなのかも、明確には判別できない状況だ。

 そもそも既存の法律は、いわゆる昔ながらの商品券の発行を行う事業者を前提に作られたような規制もあり、日進月歩で進化するデジタル金融の実態に必ずしも即していない。例えば、アマゾンギフト券のように、資金決済法が定める前払式支払手段が譲渡されて、そこから悪用がされることは想定されていなかった。そもそもKyashのようなチャレンジャーバンクは、適切な法がないまま、既存の法律の解釈の中で事業を行っているといってもいいかもしれない。

 法自体も世の中の実情を反映して変化している。20年6月に成立した改正資金決済法では、一律100万円だった取り扱い額にバリエーションを設け、100万円を超える送金も可能な第一種資金移動業者(認可制)や、従来と同様の第二種資金移動業者、少額送金に限定されるが供託ではなく分別管理も認める第三種資金移動業者の3つが新たに定められた。また、資金移動業者が銀行のように信用創造を行うことを禁止する整備も行った。

 デジタル金融サービスの歩みを止めないためにも、実情に合わせた法の整備とともに、利用者が保全や制約についてしっかり理解できる形にしていくことが求められるだろう。

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