スタバとドトールが苦戦してるのに、コメダが健闘 「立地」と「商圏」の決定的な違いとは飲食店を科学する(4/4 ページ)

» 2021年01月28日 05時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]
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大手カフェ・喫茶チェーン3社のビジネスモデルの比較

 コロナ禍前の3社の損益計算書を比較します。

大手カフェ・喫茶チェーンの損益モデル比較

 なお、ドトールコーヒーは2007年に日本レストランシステムと経営統合をしているため、経営統合前のデータを参考値として分析しています。

 この数値を見てまず気付くのは、3社の原価率の違いです。コメダHDの原価率は61.3%、スターバックスが28.2%、ドトールコーヒーが50.3%となります。この違いはフランチャイズ店舗の割合に起因しています。店舗の95%以上がフランチャイズ店となるコメダHDは、加盟店に対する食材の卸売上の占める割合が大きくなるため、全社の原価率が高くなる傾向にあります。ドトールコーヒーも、フランチャイズ店舗の割合が70%を超えるため、同じく原価率が高くなる傾向にあります。これだけ見ると、コメダはスターバックスの2倍以上も原価率をかけており、もうからないビジネスのように感じます。しかし、売上原価以外の「販売費及び一般管理費の比率」(以下、経費率)を見ると、そのビジネスモデルの秘密に気付きます。

 3社の経費率を見てみると、コメダHDは13.8%、スターバックスコーヒー62.7%、ドトールコーヒー43.4%となっています。コメダHDは圧倒的に経費率が低いことが分かります。

 コメダHDの経費率が低い要因は大きく2つあります。1つ目はコメダ珈琲は郊外やロードサイドに出店しているため、家賃比率が低いということ。もう1つは店舗のうち95%がフランチャイズ店舗なので、設備投資(減価償却費)や人件費などの負担が少ないことです。

 このように、経費の中でも特に固定費といわれるようなコストが低い企業は、コロナ禍のような経営危機で売り上げが減少しても、損益分岐点売上高が低いため、赤字リスクが低くなる傾向があります。

 コロナ禍によって、今までは成功のセオリーであったようなビジネスモデルにも変化が生じています。短期的な環境変化に対して自社のビジネスモデルを適応させることが必ずしも良い経営判断とは限りません。しかし、こういった時期だからこそ、さまざまなビジネスモデルに目を向けることも重要かもしれません。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

 皆さまにとって少しでもご参考になれば幸いです。

著者プロフィール

三ツ井創太郎

株式会社スリーウェルマネジメント代表。数多くのテレビでのコメンテーターや新聞、雑誌等への執筆も手掛ける飲食店専門のコンサルタント。大学卒業と同時に東京の飲食企業にて料理長や店長などを歴任後、業態開発、FC本部構築などを10年以上経験。その後、東証一部上場のコンサルティング会社である株式会社船井総研に入社。飲食部門のチームリーダーとして中小企業から大手上場外食チェーンまで幅広いクライアントに対して経営支援を行う。2016年に飲食店に特化したコンサルティング会社である株式会社スリーウェルマネジメント設立。代表コンサルタントとして日本全国の飲食企業に経営支援を行う。最近では東京都の中小企業支援事業の選任コンサルタントや青森県の業務委託コンサルタントに任命される等、行政と一体となった飲食店支援も積極的に行っている。著書の「飲食店経営“人の問題”を解決する33の法則(DOBOOK)」はアマゾン外食本ランキングの1位を獲得。


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