スタバとドトールが苦戦してるのに、コメダが健闘 「立地」と「商圏」の決定的な違いとは飲食店を科学する(2/4 ページ)

» 2021年01月28日 05時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]

渋谷駅と下北沢駅の商圏を比較してみた

 駅前エリアにおけるカフェ・喫茶業態の有効商圏である500メートル圏内のデータを分析していきます。

昼夜間人口比率

 渋谷駅の夜間人口は4591人、昼間人口は9万8567人ですので、昼夜間人口比率は2147となります。昼夜間人口比率は100以上で「ビジネス(通学)型商圏」ですので、渋谷駅はいわば「超ビジネス型商圏」と言えます。一方、下北沢駅の昼間人口は1万1806人、夜間人口は1万3733人です。昼夜間人口比率は86なので「住宅街型商圏」と言えます。

 さらに、別の指標を加えると、商圏の特性をより深く知ることができます。例えば、半径500メートル圏内の従業者総数(働いている人の数)を事業所数(会社の数)で割ると「1社当たり従業者数」を求められます。大規模企業が多いのか、小規模企業が多いのかを把握できます。実際に渋谷駅と下北沢駅を比較してみます。

1社当たり従業員数

 こちらを分析すると、渋谷駅半径500メートル圏内にある会社の1社当たり従業者数は17人。一方、下北沢駅は6人となるので、渋谷駅の方が下北沢駅より大規模企業が多いことが分かります。

 さらに、昼間・夜間人口を半径500メートル圏内のカフェ・喫茶店の店舗数で割ると、カフェ・喫茶1店舗当たりの昼間・夜間人口、つまり「競合性」の指標を算出できます。

カフェ・喫茶1店舗当たり昼間・夜間人口

 渋谷駅はカフェ・喫茶1店舗当たり昼間人口が348人で、下北沢駅は73人となっています。ビジネスパーソンや通学生をターゲットとしたカフェ・喫茶業態に関しては、渋谷駅の方が下北沢駅に比べて競合性が低い(マーケットが大きい)と言えます。一方、夜間人口で見ていくと、渋谷駅のカフェ・喫茶1店舗当たり夜間人口は16人、下北沢駅は85人です。実際のコンサルティングにおいては、これ以外に現地調査や賃料コスト、席数等、あらゆるデータを加味してさらに詳細な分析をしますが、あえて分かりやすく言うと今回のケースでは「下北沢駅周辺500メートル圏内ではビジネスマンや通学生をターゲットにしたカフェより、地元に住んでいる人をターゲットにした地域密着型カフェの方が良いのではないか?」という仮説を立てることもできます。

 渋谷と下北沢の例は、あくまでも仮定の話ですが、コロナ禍によって飲食店の出店における「良い立地」の定義が変わってきています。実際、最近は当社にもビジネス型商圏で店舗展開をしていた居酒屋さんなどから「コロナ禍を機に住宅街型商圏で新しいお店を出店したい」というご相談が増えてきています。

 直近の大手居酒屋チェーンの売上動向を調べると、住宅街型商圏で地域密着のお店を展開していた企業は、ビジネス型商圏の居酒屋企業よりコロナ禍の影響が少ないケースが多々ありました。

 話をカフェ・喫茶業態に戻します。次は実際に、カフェ・喫茶業態において、ビジネス型商圏ではなく住宅街や郊外を中心に展開しているチェーン店の業績を見てみます。

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