給与デジタル払い解禁へ その課題とメリット(1/2 ページ)

» 2021年01月29日 13時59分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 これまで現金か銀行口座振り込みしか認められていなかった給与支払いが、スマホ決済やプリペイドカード、電子マネーなどで支払えるようになる「給与のデジタル払い」解禁が議論されている。厚生労働省の分科会などで議論されており、この春解禁という一部報道も出てきた。

 この給与デジタル払いが可能になると、企業側、労働者側にはどんなメリットがあって、どんな課題があるのか。Fintech協会が行った会見では、「さまざまな働き方が広がる中で、給与の支払い方法も多様な方法が求められる。それをテクノロジーで実装できるのではないか」(Fintech協会常務理事の神田潤一氏)とされた。

 さまざまな働き方とは、副業や非正規労働者、外国人労働者などを指す。定期的な給与払いがある正社員とは違い、副業や非正規労働の場合、働いてから銀行振込までの期間が長いなどの制約があった。また外国人労働者の場合、営業時間や言語の壁があり、銀行口座の開設が難しい場合もあった。

 給与のデジタル払いが可能になると、「少額で短期の入金がリアルタイムで可能になるかもしれない。そして、それをそのままキャッシュレスで使えるようになる」(Fintech協会常務理事の堀天子弁護士)。

新しい働き方によって、給与のデジタル払いのメリットが出てくる(Fintech協会)

 海外では、給与専用の受け取りプリペイドカードは「ペイロールカード」と呼ばれ、ウーバーの労働者などが支払いを受ける際に使われている。銀行口座を持てない人でも、金融サービスを受けられるようにする、いわゆる金融包摂の文脈でしばしば言及されてきた。

 実は給与デジタル払いに先行して、経費精算を銀行口座への振り込みではなく電子マネーなどで払う動きはすでに始まっている(記事参照)。企業側から見ると、専用の振込ソフトを使う銀行振り込みに比べ、API経由で経費精算ソフトから簡単に支払えるほか、手数料を削減できるというメリットがある。結果的に、高頻度の支払いも可能になる。

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