3年で売り上げ13倍 自動車用電球メーカーが「幻のキノコ」生産に乗り出したワケハナビラタケ(2/3 ページ)

» 2021年02月05日 05時00分 公開
[上間貴大ITmedia]

「無理やり置いてもらった」キノコが市場で評価されるまで

 出荷を始めたころは、スーパーや直売所などを回り「無理やり置いてもらっていた」(中河社長)という。認知度の低いハナビラタケをお願いして置いてもらうため値段を安くする必要があり、採算がとれない状況が続いていた。そこで19年からは営業体制を強化。農産物の営業代行業を行う産地のミカタ代表の大畑悠喜氏と協力し、都内の飲食店への提供を目指して豊洲市場などへの出荷を開始した。

ハナビラタケの生産には緻密な環境整備が必要

 異業種からの参入となったキノコ生産だが、緻密な生産管理や在庫管理など、精密機械を扱ってきた同社ならではの体制が仲卸業者から評価されたという。

 「これまで農業は『風が吹いたら苗が倒れて明日は出荷できない』ということが当たり前の世界だった。一般消費者はそれで良しとしてくれるが、ホテルや飲食店ではメニューに影響が出るため課題となっていた。しかし、大井川電機は当たり前のように毎日納品してくれる。当たり前に思えることの積み重ねが信頼を築くことにつながった」(大畑氏)

 また、他の業者が生産したハナビラタケに比べて日持ちがする点など、品質も評価され、今では静岡県内の飲食店や、東京・浅草の老舗すき焼き・しゃぶしゃぶ専門店「浅草今半」、ホテル「椿山荘」などが大井川電機のハナビラタケを採用。今では月に1万パックを生産し、20年度の売り上げ規模は18年度比の13倍となる2000万円を見込むまでになった。

「浅草今半」が大井川電機のハナビラタケを採用

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