自動車用の電球を製造・販売する大井川電機製作所(静岡県島田市)が「幻のキノコ」と呼ばれる「ハナビラタケ」の生産に乗り出している。1パック350〜400円前後で販売し、2020年度には年商2000万円を見込むまでに成長。22年度には1億円の売り上げを目指すという。50年以上電球を作り続けていた企業がなぜキノコ生産を始めたのだろうか。
1967年に創業した大井川電機は、自動車のウィンカーやテールランプ用など、数十種類の照明用電球の生産を行っている。月間約1000万個を生産・販売し、これまでに約50億個の電球を出荷、年間約20億円を売り上げてきた。
しかし近年は、照明の発光ダイオード(LED)化が進み、売り上げが減少傾向にあった。そこで同社は、第2の柱となる新規事業の立ち上げを模索。本業である電球に関連した商品の開発や、静岡名産のお茶を使った商品、地元の温泉を活用した魚の養殖事業などを検討したが、いずれも新しい事業の柱とするには需要がないと判断。そこで目を付けたのが、ある社員が提案したハナビラタケだった。
大井川電機の中河満社長は「ハナビラタケを調べてみると、生産の難しさから希少価値があり、ほとんど市場に出回っていないことが分かった。電球製造で培ってきた品質管理と生産体制のノウハウを応用し、工場で量産できれば事業として成り立つかもしれないと感じた」と当時を振り返る。
ハナビラタケは、標高1000メートル以上の高山で生育し、採取が難しいため「幻のきのこ」と言われている。白い花びらのような見た目と、コリコリとした食感が特徴だ。近年では健康食材としても注目され始めている。
同社では15年から生産に向け温湿度管理や二酸化炭素濃度のコントロールなどの研究を実施。3年程かけて独自の栽培ノウハウを確立し、安定して出荷できるようになった。しかし、同じ“モノづくり”であるとはいえ、長年電球の製造を行ってきた同社にとって、キノコ生産は全くの畑違いである。生産技術を確立した後に苦戦したのが販路開拓だった。
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