「しゅくだいやる気ペン」は誕生までに3年を要した。企画のきっかけは、新しい事業の柱をつくる一環として、IoT文具の開発が構想されたことだった。
「最初は『何にセンサーをつけたらいいんだろう?』ということが議論になりました」
こう振り返るのは、開発を任されたイノベーションセンターネットソリューション事業部学びDtoC グループリーダーの中井信彦氏。同社にとって初のIoT文具だったので、手探りの状態からスタートした。
ハサミやテープカッターにセンサーを取り付けるアイデアがあったが、データの活用法が見出せずボツに。この後に出たのが、ペンにセンサーを取り付けるというものであった。具体的には、同社商品の「鉛筆シャープ」にセンサーを取り付け、収集したデータを筆記具のレコメンド、筆記具の持ち方矯正、思考の癖分析などに生かすというもの。さまざまな活用法が考えられたが、ニーズがあると判断された子どもの見守りツールとして開発することにした。
しかし17年に入り、子どもの見守りツールに需要がないことを思い知らされる。子どもを持つ共働き家庭を対象とした調査で子どもの学びが見守れているかどうかを問うたところ、ほとんどの家庭で「見守ることができている」という答えが返ってきたのだ。
「ユーザーのことをすごく考えてやってきたのに誰も欲しいと思わないものをつくろうとしていたので、この先どうしたらいいのかが見えなくなっていました。自信も何もなくしてしまい、プロジェクトもいったんストップしました」
当時をこのように振り返る中井氏。それでも、書くことの入り口に関わることができることにやりがいを感じていたことから、ほどなくして気を取り直す。
仕切り直すのに、まず始めたのが顧客の変更。それまでは、使うことで幸せになる顧客を親としていたが、子どもに変えた。
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