コクヨのIoT文具「しゅくだいやる気ペン」、1万台以上売れた秘密あの会社のこの商品(3/4 ページ)

» 2021年02月08日 07時18分 公開
[大澤裕司ITmedia]

クラウドファンディングの支援者への対価は「ひみつの企画会議」への招待

 コクヨにはIoTのノウハウがないため、実現するにはパートナー企業が必要だった。役割分担として、コクヨは体験設計、パートナー企業は体験の遷移図を元にアプリ開発とキャラクターのつくり込みを担当。アタッチメントは当初、デザインを含めパートナー企業が開発を担当することになっていたが、デザインに関してはコクヨが担当することにした。

 18年6月、同社は「しゅくだいやる気ペン」の開発に着手していることを報道発表。同時に、クラウドファンディングにチャレンジすることも明らかにした。

 クラウドファンディングにチャレンジすることにしたのは、外部の率直な評価を聞くため。支援金に対するリターンも、「ひみつの企画会議」への招待にした。お金を払ってでも意見を言いたいという熱量のある人を集めて、意見を聞くことにしたのである。

 「ひみつの企画会議」が開催されたのは18年10月。親子で参加してもらい、プロトタイプを用いて子どもと親それぞれから生の声を聞いた。親と子では、反応が正反対に分かれた。子どもは、使うと光り勉強時間に応じて光の色が変わる点に引きつけられた様子。ポジティブな気持ちを引き出すことができることが分かった。

たまったやる気パワーに応じてアタッチメントのLEDの色が変化。子どもも自分がどの程度頑張っているのかが感覚的につかめる。LEDの発光色は全部で11ある

 しかし親は、「これだと2〜3日で飽きるんじゃないの?」と厳しかった。この時点では、やる気の木に「やる気パワー」を注いでリンゴの実ができるところまでは決めていたが、「やる気の庭」はなく、勉強を自発的に続ける気にさせる仕掛けが乏しかった。

 親からのこのような声を受け、アプリのさらなるつくり込みを決意。勉強量に応じて棒グラフ上にスタンプを押すといった案も検証したが、現在のすごろく形式を検証したところ、子どもたちは大人がビックリするほど勉強するようになった。さらに、ゴールに到達したときのご褒美を親子で決めるようにしたところ、子どもたちはもっと勉強するようになった。中には、途中でやらなくなったドリルを引っ張り出してやり始める子どももいたという。

 結果、「やる気の庭」は「はじまりの庭」「おおむかしの庭」「うみのどうぶつの庭」など全18ステージを用意。ステージは進むごとにゴールまでの道のりが遠くなるようにし、勉強すればするほど達成感を味わえるようにした。

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