トップインタビュー

「プリコネ」「グラブル」 Cygames木村専務に聞く「大ヒットを連発できる理由」Cygames木村唯人専務インタビュー【前編】(1/2 ページ)

» 2021年02月15日 16時46分 公開
[河嶌太郎ITmedia]
phot Cygamesのゲーム「プリンセスコネクト!Re:Dive」「グランブルーファンタジー」「Shadowverse(シャドウバース)」のキャラクター

 全世界で7兆円、国内だけでも1兆円規模を誇るスマートフォンゲーム市場。最初は無料で遊べ、ゲームをするプロセスの中でユーザーに課金して収益化を図る設計のビジネスモデルが多い。その競争は熾烈(しれつ)を極めている。市場規模が右肩上がりであり、毎年ゲームタイトルが新たに登場し続ける一方で、多くの作品がサービスを終了していく。2020年にサービスを終えた作品数は160タイトル以上にも及ぶ。

 家庭用のコンシューマーゲームで大ヒットしたタイトルでも例外ではなく、例えば「ドラゴンクエスト どこでもモンスターパレード」(スクウェア・エニックス)は20年7月に、「ラブプラス EVERY」(コナミ)が8月にサービスを終了している。

 ゲームタイトルをリリースし、AppleやGoogleのアプリストアのトップセールス100位以内を勝ち取ったとしても、競争は続く。そのタイトルが人気であり続ける保証はないからだ。「ヒットゲームの5年後生存率は12%」とも言われていて、毎年多くのスマホゲームが姿を消していく。その様相は「スマホゲーム業界はレッドオーシャンを超えたブラックオーシャン」とも評されるほどだ。

 だが、こうした中で「プリンセスコネクト!Re:Dive」「グランブルーファンタジー」「Shadowverse(シャドウバース)」などヒット作を連発し、複数の作品で5年以上にわたりトップセールスを維持し続けているゲーム会社がある。サイバーエージェントの連結子会社、Cygamesだ。

 一体どのようにして、この“ブラックオーシャン”の荒波を制し続けられているのか。Cygames専務取締役で、プロデューサーとしてゲーム開発にも携わる木村唯人さんがITmedia ビジネスオンラインの取材に応じた。

phot 木村唯人(きむら・ゆいと) サイゲームス専務取締役。東京大学大学院卒業後、カナデン、シリコンスタジオを経て、2011年に代表・渡邊耕一とともに、Cygamesを設立。『神撃のバハムート』をはじめ、『グランブルーファンタジー』『Shadowverse』『プリンセスコネクト!Re:Dive』のプロデューサーを務める。2019年4月より専務取締役に就任。経営と並行して、各代表タイトルのプロデューサーとして、ゲーム開発にも深く携わっている
phot 「グランブルーファンタジー(グラブル)」のトップページ

ヒット作を出し続けられる理由

――Cygamesは「グランブルーファンタジー」(14年〜)、「シャドウバース」(16年〜)、「プリンセスコネクト!Re:Dive」(18年〜)と、自社のオリジナルコンテンツで続々と大ヒットゲームを打ち出しています。また、他社がIP(知的財産)を所有しているコンテンツでも、好調なタイトルが多くあるかと思います。今やファンの間でも開発に定評のあるメーカーといえますが、なぜヒット作を安定して出し続けられるのでしょうか。

 シンプルに、ヒットできるレベルのクオリティーになるまで作り込むことを一貫してやっているからです。もちろん、スケジュールの問題もありますから、口で言うのは簡単な一方、実現できている会社は多くはないと思います。

phot Shadowverse(シャドウバース)のロゴ

――万全のクオリティーになるまで、スケジュールを調整してでも妥協せずに作り直すということですか。

 はい。本当は決まった時間までに完成できれば一番いいのですが、なかなかうまくいかないときには追加で時間をかけて、新たに予算をかけてでもクォリティを上げる作業を続けます。当社は役員にもゲーム開発経験のある人間が多くいますから、役員レベルがヒットできるクオリティーに達したと判断しないと、ゲームをリリースしません。それが一つの戦略になっていると思います。

 リリースしてからも、このクオリティーの追求は続きます。スマホゲームの場合、出してからゲームの内容をさらにブラッシュアップしていくこともできますし、改善し続けなければさらなるヒットは見込めません。この部分にも非常に力を入れています。他社より注力している部分だと思いますね。

phot ゲーム開発企業としてCygamesは数々の受賞歴がある。eスポーツへの振興も盛んだ

 リリース初期以上のユーザーの広がりがないと先がありませんから、人員も、場合によってはリリースするまでの開発スタッフ以上の数をタイトルの運用に充てています。

 一概には言えませんが、コンテンツの更新速度についても当社は業界内でも速いと自負しています。その理由はリリースするまで以上に、リリース後のタイトルの運用に力を入れているからです。

phot 「グラブル」のバトル中の奥義発動シーン
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.