ニトリがこっそり始めたアパレルブランド「N+」 その後どうなった?新連載・磯部孝のアパレル最前線(2/3 ページ)

» 2021年02月17日 05時00分 公開
[磯部孝ITmedia]

アパレルの大量閉店を逆手に出店を加速

 20年10月におこなわれた21年第2四半期の決算発表の席上で同社の似鳥昭雄会長は、Nプラスを200店舗まで拡大する構想を明かした。また、新型コロナウイルス感染拡大により小売業界で「寡占化の時代に入った」との見解を示した。

 アパレルでは大量閉店の計画を発表する企業も多く、テナント撤退は商業施設側にとってモールの空洞化につながる。ニトリではこれをチャンスと捉え出店には積極的な姿勢をとった。21年に最大20店舗、22年以降は年間で20〜30店舗を出店。早い段階で100店舗体制を目指し、「数は力」として最終的に200店舗体制を目標と掲げた。

 このコメントを聞いて少し違和感を覚えた。その違和感とは、成功モデルの多店舗化は王道と思えるのだが、現時点で「Nプラス」でどのくらい採算が取れているのか疑問符が付くからだ。数字に関して公表されていないので推測の域を出ないのだが、この店舗の繁盛店をいまだ見つけたことがない。

(N+公式Webサイト)

無謀な戦略だった? 「ニトリ」と関連付けない多店舗化

 当初は「Nプラス」とニトリと関連付けない戦略で多店舗化した。これもかなり無謀ともいえるやり方で、話題性や新規性も無いのに、ただショッピングセンターに出店していただけだから売れるはずがない。この戦略に何の意図があったのかいまだに分からないのだが、ここにきて「ニトリ」との関連性を全面に打ち出してきた。

 最近の新店舗などは店舗サインにも「N+ ニトリ」と、ニトリという圧倒的なネームバリューを活用するやり方に変えてきたようだ。当然、ニトリのメンバーズポイントとの汎用性は、お客、ニトリ双方のメリットとなるのだから、始めからそのようにすべきだったのではなかろうか。

N+はカラーコーディネトでトータル提案(N+公式Webサイト)

 デビューして2年、着実に店舗を展開してきた事で改善されてきた部分もある。それは商品のデザインと品ぞろえだ。そもそもニトリとはシンプルな日用品を「お値段以上」と感じさせてくれる品質と、手に取りやすい価格で展開している印象が一般的だ。

 そのニトリが発信するファッションも、一般的な印象の延長線上にあるのが好ましく自然なのだ。最初に比べ今は、普通に着ていくのに難のないデザインの商品が増えてきたような気がする。相変わらずお値段も手頃なので売れ筋はすぐに売れてしまって欠品したままの可能性が高い。その証拠にイメージスナップでモデルが着用している洋服は店内に無かったりする。

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