2020年は、多くの人にとって「家で過ごす」時間が長くなった1年だった。それに伴い、お酒を飲むシーンも様変わりした。居酒屋などでお酒を飲む機会は減ったが、“家飲み”の需要は拡大している。
ビールメーカー各社にとっては、業務用の消費が大きく落ち込んだことで、ビール類(ビール、発泡酒、新ジャンル)全体の需要は縮小した。しかし、小売店などで手軽に購入できる家庭用の缶商品のニーズは大きい。20年のビール類市場は、全体が前年比9%程度の減少となる中、新ジャンル「本麒麟」が特に好調だったキリンビールの販売量の増減率は、市場全体を上回る4.5%減。大手各社が公表した数値をもとにした推計によると、ビール類のシェアでキリンが11年ぶりにトップになっている。
一方、主力ビールの「一番搾り」ブランドでは、業務用を含む全体の販売量が大きく落ち込んだ。しかし、家庭向けの缶商品は好調で、20年の販売量は約1割増。特に、10〜12月は前年同期と比べて約5割も伸びた。在宅需要を確実に取り込んでいる背景には、新商品による潜在ニーズの発掘がある。
10月以降に一番搾りブランドの缶商品の販売が伸びた理由の一つには、酒税改正がある。20年10月の改正によってビールが減税となり、新ジャンルは増税となった。価格の差が縮まったことで、よりビールを選びやすくなったといえる。
しかし、それだけで5割増という数字は出せないだろう。最も大きな原動力となったのが、10月に発売した新商品「一番搾り 糖質ゼロ」のヒットだ。
「一番搾り 糖質ゼロ」の販売目標は当初、12月までの3カ月間で約120万ケース(1ケースは大びん20本換算)に設定。ところが、発売からわずか1カ月で100万ケースを販売したことから、目標を約160万ケースに上方修正した。その目標も12月中旬に達成し、最終的には当初の目標の1.6倍となる193万ケースを販売した。
この商品は、ビールとして国内で初めて「糖質ゼロ」を実現した商品。キリンビール マーケティング部で一番搾りブランドを担当する北島苑氏は「ビールを飲みたいけれど、健康にも気遣いたいというニーズがあった。お客さまの期待が想像以上に大きかった」と話す。
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