時短せず「ノーマスク」で接客する店も 「ナメんじゃねーよ!!」と怒る“反逆飲食店”の言い分長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)

» 2021年02月22日 16時44分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

時短や休業に応じた理由とは

 大衆居酒屋の「屋台屋 博多劇場」や「大衆ジンギスカン酒場 ラムちゃん」などを経営する一家ダイニングプロジェクトは、東京都が大手外食企業に対しても1月22日から1店当たり1日6万円の時短協力金を支払うと決めたのを受けて、時短要請に従った。

一家ダイニング「リモカフェのテレワーク向けおひとり様用ソファー席」

 他の府県は、企業の規模を問わず時短協力金を支払っていた。一方、東京都だけは当初、資本金5000万円以下の中小企業や個人事業主を対象としていた。大企業を除外していたのは、資金の余裕があるためとしていた。

 同社は、協力金の支給対象から除外されては「社員、アルバイト、パートナー企業、サプライヤーの雇用を守れない」と表明。1月9日から70店中42店で時短要請に応じず、通常営業していた。

肉汁餃子のダンダダン

 居酒屋チェーン「肉汁餃子のダンダダン」約100店を経営する、NATTY SWANKY(ナッティースワンキー)も、一部を除いて時短に従わずに営業してきた。しかし、緊急事態下において、愛知県の3店以外時短営業している(2月16日午前10時時点)。

もう付き合っていられない

 一方、時短要請に応じていたが、緊急事態宣言が1カ月延長されたため、もう付き合っていられないとばかりに午後8時以降の営業に踏み切る店も出てきた。

 都内で博多料理「ジョウモン」や肉料理「ミートマン」など10店の居酒屋を構えるベイシックスでは、現状5店で午後8時以降の営業を行っている。

ジョウモン渋谷店の料理(出所:ベイシックス公式Webサイト)

 平日、六本木のミートマンは午前5時まで営業を行っていて、午前0時以降はスタッフがマスクを外している。

 ベイシックスの店舗は見つけにくい2等、3等立地が中心だ。目立った看板もなく、隠れ家のような落ち着いた雰囲気の店ばかりである。和モダンな空間で、トレンドを踏まえた洗練された料理を出す。決して高額ではないが、全般に客筋が良く、女性客が多い。かつてはインバウンドでも人気が高く、東京・西麻布にあった「てやん亭”」(現在は閉店)は、英国の権威ある日刊紙「ガーディアン」が2008年2月26日付で掲載した「東京の居酒屋トップ10」の1位に選定された。

 社長の岩澤博氏は、卓越した店づくりと人材育成の手腕で、飲食業界では慕われている人物である。簡単にキレる人ではない。

 岩澤氏のブログ「ガンさん日記」を読んでいると、緊急事態宣言の延長前は半分の店を休業していたことが分かる。残りの半分が午後8時までの営業ではほとんど売り上げが立たず、1月は前年の10分の1程度にまで落ち込んだという厳しい現状がつづられている。

 もう1年も休業、時短、自粛を断続的に続けているのに、「まだ足りない」とばかりに罰則と過料を科す。実際、ベイシックスに限らず、多くの飲食企業は我慢の限界に達してきている。

 そうした中、時短中でも渋谷の店舗では顧客が増え、満席になる日も出てきた。こうした変化をチャンスと捉え、罰金、店名公表をされても、売り上げがほしいという切なる願いで午後8時以降の営業を決めた。

 また、ノーマスクで接客する理由も説明している。居酒屋にとって最も大切なのがお店の空気感で、その空気感の演出に欠かせないのがスタッフたちの笑顔だ。笑顔がマスクに隠されている事実が残念でならない、とのことだ。

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