菅政権発足から日銀のETF爆買い急失速、それでも不透明な45兆円の出口戦略古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)

» 2021年02月26日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 日銀がこのような運用を行う背景として、まず日銀は金融政策のプロであっても運用のプロではなく、運用のための人員がない点が挙げられる。実際に投資した資金をプロの機関投資家に任せる金融商品の「ETF」に振り分けることで、「餅は餅屋」の運用を果たすのが一点目である。

 もう一点にして重要な点は、「ETFを介することで投資主体の匿名性が担保される」という点だ。仮に、日本銀行が直接大株主欄に飛び出してきてしまえば、個人投資家を中心に「日銀のお墨付きを得た」と認識し、投機的な取り引きを呼び込んでしまうリスクがある。そこで、ETF投資によって間接的に一部の企業の株式を大量に保有するに至ったとしても、過当な取引を引き起こさずに政策目的を実現できるとされていた。

 しかし、現在では、日銀による買い入れの規模が大きすぎるため、ETFを隠れ蓑(みの)としてもその尻尾を隠し切れていない。東証一部上場企業の実に2割以上で、日本銀行が事実上の大株主となっていることが観測されている。日経平均株価指数に大きく寄与している値がさ株のファーストリテイリングを中心に、“日銀買い”とその株式の値上がりが連動してしまう場面もみられている。

 2020年4月に執筆した記事では、日銀のETF購入が「格差拡大」や「コーポレートガバナンス低下」を引き起こすなどの問題点を指摘した。年々影響力が高まってくる日銀の存在感を市場が無視できなくなりつつあることも、首相交代後のETF購入が消極化した要因となっているのかもしれない。

 また、足元では1980年頃のバブル以来の株高でもある。中央銀行が高値を追うような取引を自粛し、来る急落の日に備えて余力を確保するという意図もあって、特に日経平均3万円以上の歴史的高値圏ではETF購入を差し控えていることも意図されているのかもしれない。

日本銀行(写真提供:ゲッティイメージズ)

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