漫画の世界では、スピードの速い乗り物を開発した博士が、助手にどうやって止まるかを聞かれて返答に窮(きゅう)するという場面があっても笑ってみていられるだろう。
しかし、これが「日銀の購入した45兆円の株式をどう処理するか」という点で見れば途端に笑えなくなるはずだ。実際のところ、日銀が購入したETFをどう処理するかは未だに不明確であり、いわゆる「出口戦略」がはっきりしていない。
日銀のETF買い入れが相場を下支えしたとすれば、日銀のETF売却は、相場を崩すリスクがある。買い方の強い後ろ盾となっていた日銀が突如売り方に回れば、買い方は途端に戦意を失い、その時点で売り一色となってしまう懸念がある。
そこで日銀のETFを個人投資家に直接譲渡する案や、企業に自社株買いしてもらうという案等が提言されている。日銀のETFの含み益は、2020年11月の決算資料によれば20年上半期時点で5兆円を超え、足元の株高を鑑みればその含み益はさらに拡大しているとみられる。
したがって、日銀のETFを一定の保有期間制限を設けた上で個人投資家に割引価格で売却したり、企業に自社株買いを要請したりするというOTC取引(相対取引) 手法によって市場へのインパクトを低減させる算段だ。
しかし、割引率が日銀のETF含み益の水準に近い10〜20%近辺で設定されたとしても、日銀が個人投資家に売却した後に株価が50%下落してしまえば、結局個人投資家が幾らかのプレミアム付きで値下がりリスクを転嫁されただけで終わってしまう可能性もある。
足元でETF購入が行われていない今の状況も、ともすれば日銀の「出口戦略」の一環なのかもしれない。
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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