米ゲームストップの暴騰・暴落劇 裏側で親たちに利用されるジュニアNISAの惨状古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

» 2021年02月05日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 ここ1カ月で20倍近い急騰を遂げた米国のゲームソフト小売大手チェーン「ゲームストップ」の株価が暴落している。

 SBI証券のジュニアNISAにおける米国株買付額ランキングによれば、先週1月25日から29日にかけてそのゲームストップ株が第7位にランクインしている。

 ゲームストップは先週までは順調に株価が上昇していた。年初に17ドル25セントだった同社の株価は、先週頭には76ドル79セントへ。その後もゲームストップの快進撃は止まらず、同社の株価は一時347ドル51セントにまで暴騰し、29日の終値時点では325ドルとなっていた。

 しかし、ジュニアNISAを利用してゲームストップを買い付けた親世代は、おそらく今週その投資判断を後悔しているだろう。2月2日には前日比約60%安の90ドルにまで暴落。ピークで購入した個人投資家に多額の含み損が出ている状況となっている。

ゲームストップの暴騰・暴落劇の背景

 米国で突如巻き起こったゲーム小売チェーンの暴騰劇。日本でいえばゲオのような業態のゲームストップが、なぜ米国の主要航空会社のデルタ航空を上回る2兆7000億円もの時価総額をつけるにまで上昇したのだろうか。

年末17ドルだったゲームストップの株価は、一時347ドルまで暴騰、その後急落し80ドル台まで下落した(マネックス証券TradeStationより)

 そこには、ロビンフッダーといわれる“顔の見えない仕手筋”が暗躍がある。ロビンフッダーとは、米国の新興有力証券会社であるロビンフッド社の顧客を指す。最近何かとロビンフッドの顧客がやり玉に挙げられている節もあるが、実際は米国版「5ちゃんねる」ともいわれる、Redditの個人投資家コミュニティ等を主体としたグループが相場を動かしているとみられている。

 通常、仕手筋といえば、単独ないしは複数の「機関投資家」が特定の銘柄について、投機的な売買を行うことで一定の相場を形成し、利益を得ようとする集団である。ただし、このような仕手行為は、日本においても米国においても金融商品の取引を管轄する法規制によって取り締まられており、現在、本来の意味での仕手筋は公としては存在していないことになっている。

 しかし、ロビンフッダーのように相場を形成する主体が、資金量の小さい無数の投資家の群体によるものであるとすれば話は別だ。Redditのような掲示板を介して「銘柄・時刻・買いか売りか」といった3つの要素を事前調整すれば、各個人の取引自体は小粒であっても、相場を動かすことができる。

 小魚の群体がマグロを追い返す「スイミー」や、一斉に畑に上陸して作物を食い荒らす「イナゴ」のような、個々の顔が判然としない群体としての仕手筋ともいうべき市場参加者たちが、今回のゲームストップ相場を作り上げた。

 実際に、ヘッジファンドとしても名高いメルビン・キャピタルは、ゲームストップをはじめとした空売り中心のポジションが狙い撃ちされた形となった。結果、同ファンドにおける1月の運用成績は53%程度のマイナスにまで追い込まれた。スイミーたちは見事マグロを撃退したのだ。

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