旅行業界注目の「マニアックSIT」、鉄道サークル企画の豪華客車貸切ツアーから考える杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)

» 2021年03月05日 11時03分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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旅行会社に趣味が同じ担当者がいればなお良し

 井上さんに、貸し切り列車旅をやりたい人へのアドバイスを聞いた。

 「まずは、やりたいことを鉄道会社や旅行会社に相談してみることですね。聞くだけならタダと思って、いろいろ聞いてみることから始めるといいと思います。運営は、何度やってもやはりバタバタしてしまいますので、多少の失敗は気にせず恐れず、そして信頼できる周りの知り合いを頼るといいと思います。手伝ってくれる知り合いが、意外と身の回りに多いと分かるはずです。やり切った後は、やった者にしか分からない、とても大きな達成感と満足感が得られます」

 一方、旅行会社にはどんな利点があるだろうか。COVID-19の影響で、社員旅行、修学旅行が消し飛んでしまった。そのなかで、小規模〜中規模のSITに活路がある。会員制倶楽部なら宣伝費もほとんどかからない。

 ただしSITには、参加者の「Special Interest」を正しく理解できる担当者が必要だ。日本旅行の山中さんは、同社が主催する「秩父鉄道夜行列車」ツアーや「大井川鐵道SL結婚式」ツアーも手がける、鉄道ファンからも知られた存在。だからこそ「サロンカーなにわ」ツアーでは、水島臨海鉄道と連携し、車庫見学が実現した。

 井上さんも、「私たちは日本旅行さんに限定しているわけではありませんが、相談に乗っていただける会社が少ないんです」と話す。

 旅行会社の業務の流れは、以下の通りだ。

  • 企画・ご相談(12カ月〜6カ月前)
  • 社会人団体事務局から造成の申込み(6カ月前)
  • 募集開始・Web開設(2カ月前)
  • 参加者から旅行の申込み締切り(2週間前)
  • 参加者から精算終了(1週間前)
  • 添乗、催行管理(当日)

 今から企画すると催行は1年後。1年後ともなると、旅のプロが作る旅行会社独自のツアーも立ち上がってくるかもしれないが、趣味の達人が作る「マニアックSIT」のにぎわいも大いに期待したいところだ。

帰路の車窓には、瀬戸内に沈む夕陽が映る
展望車からの夜景も情緒がある。貸し切り列車ならではの贅沢

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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