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40代で出版社からWebメディアにミドル転職 元週刊誌編集長がNewsPicksで追い求める新しいメディアの形NewsPicks Studios金泉俊輔CEOに聞く【後編】(2/3 ページ)

» 2021年03月05日 17時28分 公開

経営陣から編集部員まで リアルタイムに情報共有

――組織全体のスピード感も早そうですね。

 仰る通りスピード感はあります。意思決定のスピードが速く、感覚でいうと、普通の日本のメディア企業の倍速はあると感じています。例えば、とあるレガシーメディア企業で、あるウェブメディアを立ち上げようとした時に、名前を決めるだけでも数カ月かかったという話を聞いたことがあります。

――なぜサイトの名前を決めるだけでもそんなにかかってしまうのでしょうか。

 例えばですけど、新しいメディアのチームに携わる役員が3人いたとします。すると、媒体名の決済を取るために3人の役員とそれぞれ会って、この名前にする理由などをプレゼンする必要がでてきますよね。そのプレゼンをするために、それぞれの役員の秘書に説明する時間をくださいという形で進めると、プレゼンをするだけでも時間がかかってしまいます。さらに役員同士で名前を稟議して決済を取るとなると、1カ月とか2カ月とかいう時間がかかってしまうわけです。これはメディア企業に限らず、日本の大企業なら大なり小なり起きていることだと思います。

――NewsPicksの場合も、同じような手続きを踏むとは思うのですが、どのように決まっていくのでしょうか。

 社内でのコミュニケーションツールに「Slack(スラック)」を使用しているのですが、これによって経営陣からインターンなどの末端の編集部員までリアルタイムに情報が共有されます。例えば、サイト名に関するプレゼンもSlack上で行われ、その場で関係者全員が見える形でメリットやデメリットなどが精査され決まります。決定事項によっては、Slack上だけで決めることもあります。

――Slack上ですと、出社していなくても世界中どこでも打ち合わせが可能ですね。NewsPicksでは海外に支局を置いていますが、国境を越えたオンラインでの編集作業が日常的になされていると聞いています。

 海外にいるメンバーももちろんSlackでこうした話し合いに参加しています。コロナ禍以前からこのように意志決定をしていたので、20年4月に緊急事態宣言が出たときも大きな影響は受けなかったですね。

――しかし、こうもスピード感にあふれていると、その文化に合う人もいれば会わない人もいるでしょうから、組織としての流動性も高いと思われますが、転職する方も多いのでしょうか。

 僕がNewsPicksにきてからのこの3年間で、やめていった人はそこまで多くないですね。もちろんゼロではないものの、合わないで辞めていくケースは少ないと思います。

経営者や管理職は年下

――金泉さんは紙の雑誌の編集者だったわけですが、リモート主体の編集作業や、スピード感あふれる企業風土に合わせられたわけですね。

 できていないことも多々あるのですが、一応3年間は持ってきたつもりです。新しい環境に適応できたのは、このほうが健全なことが多いと思ったからですね。

 ただ、もちろん対面の良さというのもあると考えています。例えば信頼関係を深めるための面談などは、やはり対面のほうがいいでしょう。こうした取材もZoomによる取材も増えましたが、対面だからこそ得られる情報もあります。

 また、何か深く時間をかけて皆でそのテーマを掘り下げようとしたい場合には、社内に集まって合宿をすることもあります。これは記事や番組の企画会議だけでなく、マネジメントなど多岐にわたりますね。

――うまくオンラインとオフラインのそれぞれが持つ強みを使い分けているというわけですね。雑誌の元編集長という、レガシーメディアの良さも分かっているからこそできているようにも思うのですが、管理職としてマネジメントの仕方はどのように変えたのでしょうか。

 雑誌の編集長のように、編集部内の上座に座って、何かあったらメンバーに直接声掛けをしてというようなことはなくなりましたね。そもそもフリーアドレスでリモートのため、社内に人がいません。もちろん、やったほうがいいのではという思いもあります。

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