――扶桑社時代からDXには強い関心をお持ちだったわけですが、そこからさらにデジタル専門といえるネットメディアに移って、どのような手応えを感じていますか。
扶桑社にいた時からWebでいろいろなことにチャレンジしていたのですが、技術がなくて断念したことも多々ありました。やはり、出版社という性質上、社内にエンジニアは少なかったですし、デザイナーなども外注するのが基本でした。
この点、NewsPicksでは社内にエンジニアからデザイナーまで多様なスタッフがそろっているので、自分たちのやりたいようにできています。なので、かつての制約から解き放たれた感じですね。
――組織がフラットという意味では、NewsPick主催のセミナーに参加した際、現ニューズピックス社長の坂本大典さんが会場で机を運んでいたり客を誘導していたりして、驚いたことがあります。
すごくNewsPicksらしいエピソードですね。レガシーメディアとの組織的な違いを語る上で象徴的だと思います。他にも、インターンシップの学生が社長や会長に対してもっと情報をオープンにするべきだと迫り、「やっぱりそうだよね」というところから社長とインターン生との会話が始まる場面もみられます。こういうのもNewsPicksのカルチャーを現しているといえるのかもしれません。
――1月から金泉さんはNewsPicks StudiosのCEOに就任したわけですが、NewsPicks編集長として転職したとき、動画制作会社のCEOになると思っていましたか。
思っていなかったですね(笑)。ただ、まだまだ小さな組織で、会社の雰囲気が週刊誌の編集部に似ているんです、。そういう意味では居心地も良く、やりがいを感じています。
肩書こそ変わりましたが、「HORIE ONE」などの番組の司会も続けていきますので、これまでと変わらず面白い番組を作り続けていきたいと考えています。
――紙から映像番組も配信も手掛けるウェブメディアに移り、多様な表現に挑戦しています。もともと紙の雑誌の編集者として、テキスト・活字に対するこだわりは持っていますか。
テキストの表現がいいものと、映像表現のほうが適したものがあると考えているので、適したコンテンツ、届き方であれば、それはどちらでもいいかなと思っています。例えば「The UPDATE(ジ・アップデート)」というディベート番組をライブ配信しているのですが、ディベートの臨場感は活字だと再現しづらいですね。特に3人以上の人間が同時にしゃべる内容になると、映像のほうが確実に面白いと言えます。
一方、企業の決算情報などの場合は、映像よりも文字で伝えたほうが読者に迅速に情報を伝えられます。決算情報だけ追うのに、決算報告の動画をずっと見るのは面倒ですよね。もちろん、孫正義さんのようにプレゼンが面白い人もいますので、その場合は動画にも一定の価値はあると思います。受け手にも、活字のほうが好きな人と動画のほうが好きな人に分かれます。NewsPicksではイラストとテキストを組み合わせた「インフォグラフィックス」という表現にも力を入れています。
結局はわれわれが「ピッカー」と呼んでいるNewsPicksの読者・視聴者に何が最適な表現なのかに尽きます。これは今後も出し方を考えていきたいところですね。
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