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超小型衛星4機を打ち上げ アクセルスペース中村友哉CEOが語る「衛星画像が変える5年後の世界」地球観測サービス「AxelGlobe」の勝算【前編】(1/4 ページ)

» 2021年03月17日 11時08分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

 超小型人工衛星を活用した宇宙ビジネスを展開するアクセルスペース(東京・中央)が、自社で開発した衛星「GRUS」4機を、3月20日に打ち上げる。複数の同型衛星を一度に打ち上げるのは、日本の企業では初めてだ。

 アクセルスペースが構築を進めているのは、次世代の地球観測プラットフォーム「AxelGlobe」。複数の超小型衛星に協調した動作をさせるコンステレーションによって、世界のあらゆる地域を高頻度で観察する。2018年12月に初号機を打ち上げていて、今回の打ち上げによって5機体制にすることで、高い頻度の観測が可能になり、本格的なビジネスが始まる。

4機の超小型衛星「GRUS」を披露。写真右から2人目が中村友哉社長

 民間による宇宙ビジネスは世界的に活発化していて、21年も加速する可能性が高い。国内初の民間による衛星コンステレーションを手掛けるアクセルスペースの事業と、日本の宇宙ビジネスの可能性について前後編でお届けする。前編では、アクセルスペース代表取締役最高経営責任者(CEO)の中村友哉氏に、サービスを本格化させる「AxelGlobe」の狙いを聞いた。

中村友哉(なかむら・ゆうや)アクセルスペース代表取締役最高経営責任者(CEO)。1979年、三重県生まれ。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。在学中、3機の超小型衛星の開発に携わった。卒業後、同専攻での特任研究員を経て2008年にアクセルスペースを設立、代表取締役に就任。会社設立後、株式会社ウェザーニューズやJAXA(宇宙航空研究開発機構)等から衛星開発を受託、合計5機の超小型衛星開発・打ち上げ・運用に成功。また、2015年の大型資金調達後には自社衛星群による次世代地球観測網AxelGlobeの構築を進める。2015年より宇宙政策委員会宇宙産業・科学技術基盤部会委員

地球観測サービス「AxelGlobe」を6月に開始

 オフィスビルが立ち並ぶ東京・日本橋本町に、アクセルスペースの本社はある。2階のフロアに入ると、人工衛星の組み立てスペースが多くの面積を占めていた。社員は約80人で、そのうち半分が衛星のエンジニア。重さ100キロ級の人工衛星を増産できる体制を作ったのは、同社が国内で初めてだ。

アクセルスペース 本社が入るビル(東京都中央区日本橋本町)
本社2階にある衛星を組み立てるクリーンルーム

 アクセルスペースは、東京大学と東京工業大学で生まれた超小型人工衛星の技術を活用して、宇宙ビジネスを展開するベンチャー企業。学生時代から技術開発に携わった中村友哉氏が08年に創業した。これまで世界初の民間商用超小型衛星を含む、5つの実用衛星の開発や運用に取り組んできた。

 今後のビジネスの柱となるのが、15年から取り組んできた衛星コンステレーションによる地球観測サービスの「AxelGlobe」。18年12月に初号機を打ち上げてサービスを開始し、新たに4機の増産に成功したことを20年11月に明らかにした。

 打ち上げは3月20日で、6月には5機体制でのサービスを開始するという。中村氏は今回の増産によって、事業が大きな転換点を迎えると説明する。

 「AxelGlobeはこれまで1機でビジネスを展開していますが、地球の同じ場所を撮影できる頻度が2週間に1回なので、用途が限られています。これが5機体制になれば、十分な頻度で撮影できます。15年に事業を始めてから、本格的なビジネスを展開できるようになる点では非常に重要な局面ですし、期待の高さも感じています」

記者会見で説明する中村氏 
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