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超小型衛星4機を打ち上げ アクセルスペース中村友哉CEOが語る「衛星画像が変える5年後の世界」地球観測サービス「AxelGlobe」の勝算【前編】(3/4 ページ)

» 2021年03月17日 11時08分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

国内での衛星打ち上げに期待

 中村氏によると、アクセルスペースの創業当時は、民間による宇宙開発は日本ではまだ懐疑的な見方が大勢だったという。それから10年以上が経過して、宇宙を取り巻く環境は劇的に変化している。20年にはスペースXが民間の宇宙船で初めて有人宇宙飛行を成功させた。

 政府も20年6月、「宇宙基本計画」を5年ぶりに改訂し、今後10年間の宇宙政策の基本方針を示した。30年代には宇宙産業の規模を、現在の1兆2000億円から倍増を目指している。今後、国やJAXAが民間からサービスを調達する可能性もある一方、中村氏は国やJAXAに依存するのではなく、「協力して新たなものを生み出したい」と意欲を見せる。

 「政府が衛星画像を購入して、画像が活用されることは非常に重要だと思っています。ただ、われわれは政府に買ってもらうことに依存するわけではありません。JAXAに関しては、JAXAが持つ衛星と、私たちの衛星を組み合わせてアプリケーションを作るなど、お互いの強みを生かした協力をやっていきましょうと話しています」

アクセルスペースの超小型衛星「GRUS」

 一方で、国内では民間によるロケット射場の整備や、飛行機を活用した水平型打ち上げ方式での人工衛星の打ち上げ、超小型ロケットの開発などが全国各地で進んでいる。

 アクセルスペースでは、今回完成した4機の衛星を、ロシアが3月に打ち上げる「ソユーズ」に搭載する予定だ。中村氏は、国内で頻繁に衛星の打ち上げが実現することへの期待を次のように述べた。

 「基本的には行きたい軌道に衛星を投入してくれればいいので、どこの国のロケットで打ち上げたいという希望は特にありません。選ぶポイントは、打ち上げたいときに可能なスロットがあるかどうかと、価格、それに信頼性ですね。許容できる範囲であれば、どこの国のロケットを使うのかは柔軟に考えています。

 ただ、国内で打ち上げができれば、メリットは確実にあります。まず、海外で打ち上げる場合は衛星の輸出手続きが必要です。大量のペーパーワークがあるので、この手続きが不要になるのはうれしいですね。もう1つの大きなメリットは、(ロケットを打ち上げる)射場への移動が国内で済むことです。射場作業は必ずあるので、今回の打ち上げの際も10人くらいのエンジニアがロシアに行きます。しかも新型コロナウイルスの影響で、現地に着いても2週間は何もできません。

 衛星を打ち上げるロケットは競争が激しくなってきていて、小型ロケットだけでなく、大型のロケットも料金を下げて魅力的な価格になっています。日本のロケットが海外と比較して信頼性と価格で魅力的であれば、積極的に日本のロケットを使うようになると思います」

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