時短営業で“月180万円ボロ儲け”……ここがおかしい時短協力金制度古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)

» 2021年03月19日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]
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“スピーディーかつ正確”な給付が必要

 そもそも、飲食店における平均的な営業利益率は10〜20%程度である。そうすると、1日6万円の時短給付金が必要となる売上高の水準は、月の売上が900万円から1800万円クラスの飲食店ということになるはずだ。

 年商でいえば1〜2億円の飲食店に差し向けるレベルの給付が、「一般的な水準」かのように一律に休業補償をしてしまうことは大きな制度的欠陥である。

 さらに、年商2億円を超えるような大型店舗を営む飲食チェーンは、赤字の幅が広がっていくことになる。ただし、大型チェーンの中でも、マクドナルドやケンタッキー、吉野家はテークアウトやデリバリーサービスの需要増加もあって、コロナ前並の売上高を維持していたり、小僧寿しのようにコロナ前を上回る売り上げを出している事業者があることも事実だ。

 政府は足元で事業規模に応じて時短協力金の額を変更するよう検討を始めたという。しかし規模が大きい事業者の中にはコロナ禍が追い風となっている事業者が混在している状況では、これも有効打として効きにくいのではないか。

 例えばドイツ、フランスでは前年売上高の一定割合を支給するという方法をとっている。持続化給付金と同じように、既存事業者には「確定申告」を要件として、その時の飲食業における売上高・利益の水準から交付額に差をつけることが必要となってくるのではないだろうか。

 半ばキーワード化している「スピーディーな給付」という文句であるが、そのために質を犠牲にしては元も子もない。さらに、このような時短協力金に限った話ではなく、各企業の売上高や利益をスピーディーに把握できる仕組みが作れれば、徴税や社会保険といった、さまざまな観点でメリットが大きいのではないか。

 そうすると、菅政権肝煎りの行政改革・デジタル改革というテーマは、「ハンコ廃止」や「環境省の身分証が多いのを一元化する」等といった、分かりやすい事象だけではなく、むしろ緊急性の高い事象にも柔軟に対応していくことが求められていくべきだろう。

筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。

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