ラインアップの広さもECならではの利点だ。「マガシーク」「ショップリスト」が低〜中価格帯コスメが中心であるのに対し、「ZOZOCOSME」は「ディオール」「エスティ ローダー」「シスレー」「ジバンシイ」などラグジュアリーブランド、「ウェレダ」「ナチュラグラッセ」などのオーガニック&ナチュラルブランド、メンズコスメ、韓国コスメなど価格帯もブランド数も幅広い。全て公式出店であるのも特徴だ。
1万円を超える高額アイテムも多い。伊藤COOは「高額商品の提案には、今後の追加コンテンツも重要。『ZOZOGLASS』による計測データが増えれば、例えば『この肌トーンの人はこんな商品を購入している』といったレコメンドもできるようになる。1〜2年かけて育てていきたい」と語る。
「これまでECは不便ながら安く買える場所という位置付けだったが、今は個人のニーズに合わせられる利便性の需要が高まった。『ZOZOGLASS』などでいい体験、提案ができれば、オフライン、オンラインで同レベルの体験価値を提供できる。価格勝負ではない売り方ができるだろう」(伊藤COO)
その他のユーザー体験には、3月末から始まるサンプルキャンペーンがある。アパレルを含めた「ZOZOTOWN」での購入時にサンプルがランダムに同こんされる仕組みで、ブランドが配りたい客層や、ZOZO側が配りたい客層にも配布するという。新型コロナを背景に化粧品のお試し需要は伸びており、ブランドにとっても新しい接点として魅力的だ。
こうしたキャンペーンやサイト設計、ブランド誘致はユーザーのニーズを反映している。伊藤COOは「サンプルや肌トーン計測の需要は、新型コロナの影響で高まっている面もある。しかしアフターコロナでもECの需要がなくなるわけではない。忙しい人が通勤電車で買い物をしたり、夜にゆっくりしながら家から買い物をしたり、都合に合わせて今後もECは活用される」と話す。実際、新型コロナ禍で増えた新規ユーザーの多くが、既存ユーザーと遜色ない回数「ZOZOTOWN」で買い物をしているという。
この姿はまさに、近年叫ばれているOMO(オンラインとオフラインの融合、Online Merges with Offline)やDX(デジタルトランスフォーメーション)の形だ。これらは多様化するユーザーニーズに対応し、ユーザー視点で快適な買い物体験を提供するためのものだ。
質感や色味、また美容部員による接客を重視する化粧品業界においてOMO、DXの流れは緩やかだったが、新型コロナを機に機運が高まった。ファッションECのコスメ事業は、そうしたユーザー視点で利便性を追求した結果として理にかなっている。
臼井杏奈(うすい あんな/ライター、編集者)
青山学院大学文学部卒業。産経新聞社の記者職を経て、ビューティー業界紙WWD BEAUTYで記者・編集職。2020年4月からフリーランス。中国や欧米などの海外市場やビューティーテック、スタートアップなどを中心に美容・ファッション関連の取材執筆を行う。
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