一方で、日銀が日経平均株価指数に投資をすることについて批判的な市場参加者も少なくなかった。この動きがマーケットの健全化に寄与するとみる者も少なからず存在する。
日経平均株価指数やダウ30種平均指数のように、時価総額が小さくても株価が高ければ指数に高い影響を与えられる「株価平均型」指数は、これまでは各国を代表する株価指数としての地位を確立してきたものの、現在では「時価総額加重平均型」が主流だ。
米国では、S&P500指数が注目を集めており、日銀が今後買い入れを進めるETFも、S&P500と同じ仕組みのTOPIX(東証株価指数)に連動するものとなっている。「時価総額加重平均」と呼ばれるこの仕組みは、近年で新しく開発される株価指数の大多数で採用されており、今回の動きは「日本を代表する指数が入れ替わる分水嶺」ととらえる者もいるようだ。
時価総額加重平均型のメリットは、より正確に経済的インパクトを指数化することができる点に尽きる。この方式は、日経平均株価のように構成銘柄それぞれの1株当たりの値段を平均したものではない。それぞれの企業の時価総額に応じてウェイトを調整することで、時価総額という社会への影響力を踏まえた形で、景気のバロメーターとしての株価動向をとらえることができるのだ。
TOPIXやS&P500をはじめとした、新たに支持を集めている数多くの株価指数は「時価総額加重平均型」で構成されている。日銀が日経平均株価からTOPIXに乗り換えたことは、我が国における代表的な株価指数の認識が日銀内で変化したことを示唆した。
日本銀行が打ち出した異例中の異例策である「ETF買入れ」という金融政策。日銀と政府はその一定の効果を10年以上にわたってアピールするものの、金融政策に積極的な米国を含む主要各国では、中銀が直接ETFを購入するといった動きをみせることはなかった。
現に、日経平均連動型のETF買入れ停止に伴い、業績とは関係なく売られるユニクロ、ソフトバンクGをはじめとした日経平均高寄与銘柄群は、思わぬ株価下落というツケを払わされている。買入れ額は変わらないにもかかわらず、これだけの影響を市場に与えるようになってしまった日銀のETF購入策、これが「出口戦略」になれば、今回を遥かに上回る影響が市場で発生してくることは避けられないだろう。
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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