いずれはNTTが買収も? 楽天・郵政タッグに透けて見える、「楽天モバイル」の“賞味期限切れ”感官製値下げで窮地に(3/4 ページ)

» 2021年03月26日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

いまだに「実質国営」の郵政

 郵政は法律で民営化の方針が決まりながらも政治的綱引きが続き、いまだに国の資本が50%を超えている「実質国営企業」です。その郵政が1500億円もの大金を一民間企業に出資をする場合、当然大株主である国の了解を得ているはずです。常識的に考えれば、「実質国営企業」が一民間企業へ一方的に出資して資本提携するということを、国としては慎重になるはずではないでしょうか。ということを考えると、むしろ私には、国が主導で郵政から楽天に出資をさせたのではないか、とさえ映るのです。

 すなわち、楽天は当初国からも「横並びブレイカー」を期待され携帯電話事業の免許を取得したものの、国の方針で携帯電話料金値下げに巻き込まれました。その結果、図らずも収益を圧迫されている現状を、免許を与えた国としておもんばかったのではないかと思えてなりません。共同会見では、今回の資本提携について楽天サイドからの申し出であると三木谷氏が明言しています。これは、モバイル事業が足を引っ張る形での大赤字決算が見えた段階で、提携先の郵政を通じて国へSOS信号を発したのではないか、とも受け取れるわけです。

 そうでなければ、こんないびつな一方的かつ多額の資本提携を、「実質国営企業」である郵政の戦略として大株主である国があっさり認めるわけがありません。すなわち、今回当事者が資本提携と称するものは、実質的に国による楽天への資本注入なのではないのか、ということです。

楽天がNTTの軍門に降る可能性も?

 この先にあるものは恐らく、国が「楽天の大株主の大株主」としてその動向に目を光らせていくということでしょう。そして国策として強化を押し進める5G、6G対応に向け先行きの暗い楽天のモバイル事業を、いずれは売却させる(買い手は、同じ国が株主のNTTでしょうか)、そんな腹があるのではないかとまで想像が膨らむのです。

いずれはNTTが楽天モバイルを買収する可能性も?(出所:NTT・ドコモが開催したオンライン記者会見、左からNTTの澤田純社長、ドコモの吉澤和弘社長))

 そもそも5G、6G戦略に関しては、国の見通しも甘すぎました。東京五輪後をターゲットにしてきた5Gの本格稼働が、新型コロナ感染拡大により五輪が延期される間に、予想以上のスピードでDX化の波が世界で広がり状況を一変させました。外部環境の激変という側面は否めませんが、楽天を第4の通信キャリアとして参入を認めたときと今とでは、状況があまりに異なってしまっているわけであり、国としても当然方針変更を迫られます。

 そして楽天も、現状では規模、事業姿勢、収益状況等から判断して、国防上ますます重要性が増している通信キャリアに、およそふさわしいとはいえない状況にあるわけです。通信事業という公共性を帯びたビジネスを甘く見て、基地局設置の遅れなどが露呈したびたび業務改善命令が発せられている時点で、国は早々に楽天を見限った感が強く漂います。楽天新規参入の意義まで無視して携帯料金の官製値下げを強行に進めた裏には、国の「楽天の賞味期限切れ」という判断もあったのではないかと思うのです。

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