セコい値下げで喜んでいる場合ではない、NTTのドコモ完全子会社化ウラ事情5G時代なのに……(1/4 ページ)

» 2020年11月04日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

 NTTによる、「ドコモ完全子会社化」の報道は、ハッキリ申し上げて驚愕の一言でした。

 何よりまず頭をよぎったのは、NTTグループは政府指導により分割を余儀なくされたのではなかったのか、という疑問です。そして、為政者は自らの人気取りのためであれば、政府資本が入っているとはいえ一民間企業の長期戦略をも翻弄することを厭わないのか、とも感じるニュースです。

 もちろんこれらは、発表時点で私個人が持っていた予備知識だけを元に感じたことにすぎませんが、あの時直感的に感じたこの問題意識はドコモ完全子会社化に至る経緯などが報道により徐々に明らかになった今でも、さして大きくは変わっていません。本件に関しては、これまでに分かったこと、いまだ判然としないこと、さまざまありますが、現時点で個人的に感じる本件の問題点と今後の展望について記してみたいと思います。

 コトの発端は、2018年8月当時、官房長官だった菅義偉首相が言い放った「携帯電話料金は4割程度引き下げる余地がある」という発言でした。官房長官が首相の言動に関係なく独自で発したこの発言を聞いたときに、「小泉政権のやり口をまねた、人気取りだな」と直感的に思いました。

出所:ロイター

 近年の歴代首相では圧倒的な支持率と人気を誇った小泉純一郎氏は、「郵便局」という身近な存在を民営化して効率運営をはかることが、国民生活を豊かにするかのように思わせた「郵政民営化マジック」で支持を広げました。菅義偉官房長官は、17年暮れに天皇(現上皇)陛下の退位が19年4月末に決まったことを受け、安倍政権が継続する限り、官房長官自身が新元号を公表する「令和おじさん」(この時点で新元号は未定でしたが)として注目を集めることを見据え、一気に国政の頂点に上り詰める色気が出たと考えるのはあながち外れではないでしょう。

 そして18年8月、翌年に迫る「令和おじさん」キャスティングだけでは人気取り的に弱いと感じた官房長官は、小泉政権に倣って国民に身近な人気取り政策を自身のイメージ戦略の柱とすべく「携帯電話料金4割値下げ」を新元号発表前にぶち上げた、と私には映りました。では、なぜ携帯電話に目を付けたのでしょうか。

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